二人が出発する日。
二人を笑顔で送り出す。
愛里に電話しようと思ったけど、二人に聞かれては計画が全て台無しになるため、二人の姿が完全に見えなくなってからにする。
数分後。私は、愛里に電話をかけた。
言外に言う。今なら安全に会えるよ、と。
少しだけ、凹む。
君にとって最後に私と会ったのがいつかなんて、「そういえば」程度のことでしか無いのか。
私は、次いつ君に会えるかと、指折り数えていたんだけど。
まあ、これからはずっと君の隣にいれると考えると、そんなことどうでも良くなってしまうけど。
電話が切れた。
嗚呼、もうすぐだ。
こんな日々が、終わるのは。
ピンポーン。
チャイムが、鳴った。
愛里が来たみたいだ。
私は、ドアを開けた。
愛里を家に入れると、私は家の鍵をかけた。
愛里をリビングに座らせ、私は飲み物とお菓子を準備しに台所に向かう。
立ち上がりかけた愛里を、私は制した。
愛里は納得したように腰を下ろした。
私は安心して台所に向かった。
台所から愛里に声をかける。
二つのカップにミルクティーを淹れて、クッキーをお皿に盛り付けて。
お盆にのせて、私はリビングに戻った。
お盆をテーブルに置くと、愛里はマグカップに手を伸ばした。
私は慌てて愛里を止める。
愛里はカップを引き寄せ、クッキーに手を伸ばした。
覚悟はできてるとはいえ、やっぱり緊張する。というか、怖い。
でも、もう引き返すことはできない。
心臓がうるさい。
深呼吸をして、心を落ち着かせる。
そんな私を不審に思ったのか、愛里は首をかしげた。
息をするように嘘をついてきた私は、また息をするように嘘をつく。
薄紫色のマグカップになみなみと注がれたミルクティーの水面が、揺らいだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。