第6話

⛓️「ミルクティー」
19
2024/04/12 12:00
二人が出発する日。
じゃあ、お留守番よろしくねー。
戸締まりと防犯きちんとするんだぞー。
_松原雅@まつはらみやび_
松原雅まつはらみやび
そのくらい大丈夫だって、子供じゃないんだから。
そうか、そうだな。
二人を笑顔で送り出す。
愛里に電話しようと思ったけど、二人に聞かれては計画が全て台無しになるため、二人の姿が完全に見えなくなってからにする。
数分後。私は、愛里に電話をかけた。
_美原愛里@みはらあいり_
美原愛里みはらあいり
もしもし?
_松原雅@まつはらみやび_
松原雅まつはらみやび
もしもーし、愛里、今から私の家来ない?
_美原愛里@みはらあいり_
美原愛里みはらあいり
雅の家?
_松原雅@まつはらみやび_
松原雅まつはらみやび
お父さんとお母さん旅行行っててさ、二人きりになれるよ。
言外に言う。今なら安全に会えるよ、と。
_美原愛里@みはらあいり_
美原愛里みはらあいり
そう、そっか、行く。
_松原雅@まつはらみやび_
松原雅まつはらみやび
来てくれるー?嬉しい。
_美原愛里@みはらあいり_
美原愛里みはらあいり
ちゃんと会うの久しぶりだね、そういえば。
_松原雅@まつはらみやび_
松原雅まつはらみやび
うん、
少しだけ、凹む。
君にとって最後に私と会ったのがいつかなんて、「そういえば」程度のことでしか無いのか。
私は、次いつ君に会えるかと、指折り数えていたんだけど。
まあ、これからはずっと君の隣にいれると考えると、そんなことどうでも良くなってしまうけど。
電話が切れた。
嗚呼、もうすぐだ。
こんな日々が、終わるのは。
ピンポーン。
チャイムが、鳴った。
愛里が来たみたいだ。
私は、ドアを開けた。
_美原愛里@みはらあいり_
美原愛里みはらあいり
やっほー。
_松原雅@まつはらみやび_
松原雅まつはらみやび
久し振りー!
愛里を家に入れると、私は家の鍵をかけた。
愛里をリビングに座らせ、私は飲み物とお菓子を準備しに台所に向かう。
_美原愛里@みはらあいり_
美原愛里みはらあいり
手伝うよ?
立ち上がりかけた愛里を、私は制した。
_松原雅@まつはらみやび_
松原雅まつはらみやび
大丈夫。愛里うちのキッチンのどこに何があるかよく分かってないでしょ?
_美原愛里@みはらあいり_
美原愛里みはらあいり
あー、そっか。
愛里は納得したように腰を下ろした。
私は安心して台所に向かった。
台所から愛里に声をかける。
_松原雅@まつはらみやび_
松原雅まつはらみやび
愛里紅茶で良いよね?
_美原愛里@みはらあいり_
美原愛里みはらあいり
うん、私紅茶好きだよー。
_松原雅@まつはらみやび_
松原雅まつはらみやび
ミルク?ストレート?
_美原愛里@みはらあいり_
美原愛里みはらあいり
ミルクでお願い。
二つのカップにミルクティーを淹れて、クッキーをお皿に盛り付けて。
お盆にのせて、私はリビングに戻った。
お盆をテーブルに置くと、愛里はマグカップに手を伸ばした。
私は慌てて愛里を止める。
_松原雅@まつはらみやび_
松原雅まつはらみやび
あ、そっち私がいつも使ってるカップだから。愛里はこっちで飲んで。
_美原愛里@みはらあいり_
美原愛里みはらあいり
そうなの?ごめん。
愛里はカップを引き寄せ、クッキーに手を伸ばした。
 
覚悟はできてるとはいえ、やっぱり緊張する。というか、怖い。
でも、もう引き返すことはできない。
心臓がうるさい。
 
深呼吸をして、心を落ち着かせる。
そんな私を不審に思ったのか、愛里は首をかしげた。
_美原愛里@みはらあいり_
美原愛里みはらあいり
どうしたの?
_松原雅@まつはらみやび_
松原雅まつはらみやび
いや、愛里と久し振りに会えて嬉しくてさ。
 
息をするように嘘をついてきた私は、また息をするように嘘をつく。
 
薄紫色のマグカップになみなみと注がれたミルクティーの水面が、揺らいだ。

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