皆さんこんばんは。今宵もこの館にご来館くださり、ありがとうございます。
今回のお話は、お客様からお寄せいただいた怖い話でございます。
では、お楽しみくださいませ……
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ふと目が覚めた。部屋を見回すと、まだ外は暗い。時間を確認する。まだ真夜中だった。再び寝てしまおうかとも考えたが、私はなんとなく1階に降りることにした。
「ちょっと怖いな…」
部屋を出た先に続く廊下は真っ暗だった。何も見えないまま壁に手を添えながら進んでいく。しばらく進むと、階段にたどり着いた。何故1階に下りようと思ったのか、今となっては分からない。けど、その時は何故かこの階段を下りて1階に行かなくてはならない気がしていた。
暗くて怖いので、手すりを持ちながら一段一段下りていった。使い慣れた階段だから、1階に下りるのなんて一瞬のはずなのに、この時はとても長く感じた。いや、感じたのではなく、実際に長かったのかもしれない。下りても下りてもなかなか1階にたどり着かないのだ。
「なんで…?なんで階段が終わらないの…?」
こんなこと有り得るはずがない。でも、現に私はおかしな状況に居合わせているのだ。もう本当に訳が分からない。恐怖に押しつぶされそうになった時、背後で突然ガタガタと物音がした。
「だ、誰かいるの!?」
すぐに後ろを振り向く。人の気配はなかった。でも物音はだんだん大きくなり、今にも私に襲いかかってきそうで。
ガタガタガタ
ガタガタガタガタ
ガタガタガタガタガタガタガタ
暗闇に目が慣れてきて、ようやく周りの様子がぼんやりと見え始めてきた。そして私の後ろで起こっている出来事に目を丸くした。私の背後から近づいてきていたのはソファだった。1階のリビングにあるはずのソファが2階から私に向かって落とされているのだ。
「ま、待って!!」
そんなこと言ってもソファは止まらない。こんな重いものが私の上に降ってきたら、ただじゃ済まないだろう。ソファに押し潰されてしまうし、私は階段から転げ落ちてしまうだろう。そうなれば骨折は免れない。打ちどころが悪ければ死んでしまう。
(下りなきゃ!逃げなきゃ!)
止まってくれないソファに追いつかれないように私は必死で階段を下りた。人生で一番長い階段だった。無我夢中で下りていると、急に階段の終わりが見えた。ようやく1階にたどり着いたのだ。
「はぁ、はぁ……」
階段の方を向く。いつの間にか音は止んでいて、ソファも止まっていた。まるで今までの出来事がなかったかのように、再び辺りは暗闇と静寂に包まれた。
「た、助かった…?」
何はともあれ、無事に1階に下りてきたのだ。私はほっと胸を撫で下ろした。深くため息をついてから前を向いた。私の前方にはリビングがある、はずだった。
(リビングってこんなんだったっけ…?)
確かに一目見ただけではいつものリビングとなんら変わりはない。だけど明らかに何かが違う。何が違うかと言われたら答えられないけれど。いつもの雰囲気じゃないことだけは分かった。まるでここだけ異世界に飛ばされたんじゃないかって思うくらいリビングは不気味だった。
恐る恐るリビングに足を踏み入れる。自分の勝手知ったる場所なのに、どうして怯えなきゃならないのだろう。でも、知ってるはずのその場所は私の知らない場所だった。
「…ん?」
リビングの違和感の正体に気がついた。テレビの前に置いてあるソファ。私の見覚えのないものだった。ワインレッドの革張り。2人がけのソファ。絶対にうちにあるはずのないそれが堂々とリビングに置かれていた。しかもそこに誰かが座っている。後ろから見るに、男女であろう2人組はそのソファに座って、ついてもいないテレビを眺めていた。
(お父さんとお母さんじゃない)
その2人は両親ではなかった。会ったこともない知らない人。一度引っ込んだ恐怖が再び私を飲み込んでいく。誰?なんでここにいるの?どうやって入ったの?そのソファは何?その質問は声に出ない。その代わり私は2人の背後から近づいた。その時の私が何を考えていたのかは分からない。そっと逃げればいいのに。そもそも1階に下りてくる必要なんてなかったのに。私は足音を立てないように、細心の注意を払いながら近づいた。
(もうバレる…!)
ソファに手を伸ばせばもう届きそうなほど近づいた時、女が前を向いたままこう言った。
「あなたもこっちへいらっしゃい」
視界が暗転した。
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今回はお客様が保育園の頃に見た夢に基づいたお話です。許可を頂き、一部加筆しております。
夜中の家、そこは昼間とは違う景色が広がっているかもしれません。あなたも異世界に引き込まれることのないよう……。
それではまた次回、この館にお越しくださいませ。ご来館ありがとうございました。
P.S.皆さんの怖い話をお聞かせください。いつかこの館でご紹介するかもしれません。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!