第3話

計画の始まり
22
2023/05/07 10:45
霊斗
霊斗
ただいまー
とりあえず家に帰って来た。
おかえりー
いつも通り母親が迎えてくれる。少し遅くなったのは気づいていないようだ。
霊斗
霊斗
…部屋いってくるね
そう言い、僕は階段を登る。
部屋に入り、椅子に腰掛け、ため息をつく。
霊斗
霊斗
面倒臭い事に巻き込まれたのは確定だな
霊斗
霊斗
ただ…
霊斗
霊斗
面倒臭いからってどうこうできることじゃないよな
霊斗
霊斗
…ハァ
そんなため息をつきながら僕はまた影に飛び込んだ。
零人
零人
おっ、来たか
霊斗
霊斗
来てやったよ
零人
零人
上から目線やめい
霊斗
霊斗
…とりあえず、計画って奴を説明してもらっていい?
霊斗
霊斗
影世界を切り離すって言うのも良く分からないし
零人
零人
ああ、その説明をしようと思ってた。
零人
零人
影世界を切り離すってのは、まず影世界の始まりに遡る。
零人
零人
長い話は無理だろうから簡潔に言うが、この世界は宇宙に写った「世界」の影なんだ
霊斗
霊斗
…「世界」ってのは、僕が住んでるこの地球のこと?
零人
零人
零人
零人
そうだ。
零人
零人
そんで何らかの原因…ゲームで言うバグが起こり、地球に発生する影と、影世界が繋がっちまった。
零人
零人
影世界を切り離すって言うのは、このバグを治すってことだ。
零人
零人
だからもう一度地球の方の影を再読み込みリロードすればいい。
零人
零人
…まあ、俺は今スケールデカく言ったが、実際はこの町でしか起きてない、小さなバグだ。
零人
零人
だから俺…俺達でも可能だ
霊斗
霊斗
…具体的にどうするの?
零人
零人
5日後の皆既日食。その日は天体の位置や天候の影響で、数十秒は真っ暗になる。そしてその瞬間この街の電気を止める
霊斗
霊斗
…がっつり犯罪じゃん
零人
零人
バレないようにすればいい
零人
零人
…時には法で決めれない「するべきこと」ってのもあるのさ
霊斗
霊斗
…よくわかんない
零人
零人
無理にわかる必要ねぇよ
零人
零人
計画の流れは、日食の瞬間、この街の変電所に忍びこみ、一時的に電気を止めさせる。
零人
零人
この街の半分でも影を消せば、繋がり全体が切れるだろうさ。
零人
零人
そして止めるのは俺だ。
霊斗
霊斗
え?
零人
零人
俺が一時的に入れ替わるってことさ。
霊斗
霊斗
…その理由は?
零人
零人
この計画を発案し、変電所内部までの知識があるからだ。文句はあるか?
霊斗
霊斗
それなら納得したよ。
霊斗
霊斗
ただ、僕の体を奪って逃げるなんて真似しないでね。
零人
零人
零人
零人
ああ、しないさ。
霊斗
霊斗
それじゃ、戻ろうかな。
零人
零人
おう。
霊斗
霊斗
そんじゃ。
霊斗
霊斗
ふぅ…
こっちの世界の方に戻って来た僕は、息を吐いた。
何と言うか、デカいわけでも、小さいわけでもない計画だった。
ただ、実行するのは零人ということは安心出来るかも知れない。
…本当に安心だろうか?
相手は影。本当に信じて良いのか?
霊斗
霊斗
あいつに頼って大丈夫かな
…大事なことを忘れてる気がする。
零人
零人
(聞こえてんのよ。)
脳に響くような彼の声。 
そういや影世界行かなくても喋れるんだった。忘れてた
霊斗
霊斗
(こんな感じなのは想定してなかったな。)
零人
零人
(俺も知らなかったよ。ただのテレパシーだろこれ)
…ただのテレパシーってなんだ?
零人
零人
(大丈夫だと思ってもらうしかないんだよな〜すまねぇ)
霊斗
霊斗
(まあ、しゃーないか)
そんなことを思いながら、僕は部屋から出て、リビングへと向かっていった。
零人
零人
俺はやらなくちゃいけないんだよ。
お前にどう思われてもいい。
だって、影だから。
運命は回り続けている。

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