いつもとは雰囲気の違う服を着たあなたさんがひらひらと手を振りながら歩いてくる。
ど平日の渋谷。
僕の存在に気付く人は少ない。
僕が素直にそう言うと、あなたさんは少しだけ照れたように頬を染めた。
綺麗に施されたメイクが可愛らしい。
僕のことを考えながらやってくれたのだろうか。
そう言ったあなたさんは、僕の手を引いて歩いていく。
初めてのデート。
楽しそうに前を歩くあなたさんの後ろ姿が愛おしい。
無理にでも休みを取ってよかったと心底思った。
初めて、手を繋いでいる。
僕がそう聞くと、彼女はくるっと振り返って歯を見せて笑った。
悪戯っぽく笑う彼女に目が釘付けになる。
恋人。
その四文字がズンと僕の心に響く。
あなたさんからその言葉を聞けたのが嬉しかった。
この歳になってこんなことで浮かれているなんて。
少しだけ恥ずかしくもあるけど、それ以上に嬉しい。
それ以上に、愛おしい。
喉から出てきた一言。
あなたちゃんは嬉しそうに笑って、僕の手を引いて歩き続けた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!