震える指で、私は一言だけ打ち込んだ。
送信ボタンを押した瞬間、
取り消せない現実になった気がして、
胸がぎゅっと縮む。
既読は、すぐについた。
早い。
待ってたみたいに。
鼓動が跳ね上がる。
「 今から。 」
頭が真っ白になる。
部屋の時計を見ると、
もう九時を回っている。
遅い時間。
でも、葛葉の家は歩いて十分もかからない。
どうするの、私。
会ったら、きっと何かが決まる。
終わるかもしれないし、
続くかもしれない。
でも、逃げたくない。
コートを羽織って、
そっと家を出る。
夜の空気は、昼間よりもずっと重い。
歩きながら、いろんな考えがぐるぐるする。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!