その日から私の"悪役令嬢計画”が始まった
小さな身体で、必死に腕を支える
腕が震える、床に落ちそうになる体を、歯を食いし
ばって耐える
──腕立て伏せ、五十回
たったそれだけのはずなのに
どさりと最後の一回を終え、そのまま床に崩れ落ちる
息が荒い、体が重い、けれど──
震える腕で、ゆっくりと身体を起こす
次は、腹筋百回
部屋の鏡の前で、ゆっくりと視線を細める
腕を組み、小さく頷く
完璧とは言えないけれど、確実に近づいているはず
扉の向こうから声がする
振り返ると、少しだけ扉が開いていた
そこから覗くのは、年の離れた兄の姿
一瞬、思考が止まる...けれどすぐに、顎を上げ
(完璧な返しね)自画自賛する。しかし
兄は少しだけ目を細めて、ふっと笑った
これは努力とかそういう話じゃない
ただ、"悪女として当然の振る舞い”を
そう言い、ぽん、と頭に手を置かれる
優しい声、温かい手
完全に距離を取るはずだったのに
むしろ、お兄様に舐められてる?
その事実に気づいた瞬間、胸の奥が、ほんの少しだけ
ざわついた
──悪役令嬢としては、失敗
ゆっくりと視線を逸らす
まだ始まったばかりなのだから
そして夜、ベッドの上には本の山
ページをめくる手は止まらない
毒も、薬も、言葉も──
すべては“使い方次第”で人を制することができる
疲れているはずなのに、頭は冴えていた
そしてまた翌日、翌日と...
筋トレと勉強を繰り返す日々、何度も倒れそうになり
ながらもそれでも、やめることはなかった
声が掠れる、視界が揺れる
それでも──
──そして、一週間後
何事もなかったかのように、再び彼らの前に立った












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。