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第31話

⑦黒鬼の半面
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2023/11/04 16:40
御神 志貴
御神 志貴
ただいま
志貴が自宅に帰ると、



いつものようにジョーカーが志貴を迎えた。
ジョーカー
ジョーカー
どうした、志貴
おかえりより先に、



ジョーカーは志貴の顔を見てそう声をかけた。



志貴は暗い様子だった。
御神 志貴
御神 志貴
烈火星宮が死んだ
ジョーカー
おー、
御神 志貴
御神 志貴
それと、面が割れちゃった
「どうした?」に込められた意味は



面をしていない理由を尋ねていたのかもしれない。



しかし、志貴が面をしていなかったので、



ジョーカーは志貴の表情が



いつもよりわかりやすかったのは事実だ。



割れてしまった面を見て、志貴は悲しそうにしていた。
御神 志貴
御神 志貴
大切な面なのに
4年前、3月11日。
志貴は時計の針が進む音と微かなタバコの匂いで



ゆっくりと目を開けた。
ジョーカー
よォ、志貴
志貴の起床に気づいたジョーカーは


タバコの煙でmorningと形を作った。
御神 志貴
御神 志貴
おはよ、ジョーカー
ジョーカーに窓を開けてタバコを吸うように言うと、


志貴は上体を起こして、大きく伸びをした。
ジョーカー
志貴ィ
御神 志貴
御神 志貴
ん?
ジョーカーが名前を呼ぶ声に釣られて、



志貴はジョーカーの方を見た。



ジョーカーが消したばかりのタバコの残った煙が



happybirthdayの形をしている。
御神 志貴
御神 志貴
あー、そっか
御神 志貴
御神 志貴
今日は3月11日
それを見て志貴は微笑んだ。
御神 志貴
御神 志貴
僕の誕生日か
志貴はいつもより明るく笑って見せた。


志貴のその顔を見て、


ジョーカーは志貴にプレゼントが


いくつか届いていたことを伝えた。


志貴は階段を降りて、店の入り口に行くと


ジョーカーが言った通り、プレゼントが置いてあった。


志貴の大好きな酒、花束、本、灰島の研究データetc
御神 志貴
御神 志貴
あれ?
その中に一つだけ差出人のないものがあった。


手紙などもない。


ただの木箱だ。
御神 志貴
御神 志貴
なんだろう
志貴は箱を開けた。


中には黒い鬼の半面が入っていた。


左の目が青、右の目が赤の鬼のお面。
御神 志貴
御神 志貴
あ、僕の目と同じだ
しかし、しばらくその面を見ていると


志貴はあることに気がついた。
御神 志貴
御神 志貴
違う
御神 志貴
御神 志貴
目の色じゃない
黒鬼の半面は、


左目が青、


右目が赤、


額に生えた一本の角は黄色で、


目元には銀色の模様が入っている。
御神 志貴
御神 志貴
炎の色だ
志貴が操る5色の炎。


黒、青、赤、黄、そして白。
御神 志貴
御神 志貴
差出人はセンスがいいなぁ
ジョーカー
喜んでもらえるたァ、嬉しいねェ
お面を見て、そう言って笑った。
ー形のあるものは壊れてしまう。



ーどんなに大切なものであっても。
御神 志貴
御神 志貴
ねぇ、ジョーカー
御神 志貴
御神 志貴
誰かにとってのヴィランは実は誰かにとってのヒーローなんだ
御神 志貴
御神 志貴
僕にとってジョーカーがそうであるみたいに
ジョーカー
おー、

面を見つめたまま一言も喋らなくなった志貴の様子を 


黙って伺っていたジョーカーは


ようやく口を開いた志貴の話を


タバコを吸い、 相槌を打ちながら聞いていた。
御神 志貴
御神 志貴
ねぇ、ジョーカー
御神 志貴
御神 志貴
烈火には僕は敵に見えたかな、
ジョーカー
そーかもな
御神 志貴
御神 志貴
どうすれば、あの子が壊れずに済んだだろう
ジョーカー
さァな
御神 志貴
御神 志貴
浅草に用事ができちゃった

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