第14話

説得
988
2021/02/15 22:46 更新
CCGの建物に着き、情報提供の際に使用するとされる場所まで案内される。
喰種が通れば反応すると言われるゲートを抜け、僕と敦君はソファーに座った。
全員居たら目立つし、立たせる訳には行かないからと、ハイセ君はクインクスメンバーに自分達の仕事に戻るよう指示を出した。
影嶺 威吹
影嶺 威吹
(CCGの中に入るのは初めてだなあ。タケさんや有馬さんも此処で働いているのだね)
中島敦
中島敦
な、なんだか凄い場所ですね……
佐々木琲世
佐々木琲世
ここは喰種対策局、CCG本部なので……って、CCGをご存知では無い……?
中島敦
中島敦
は、はい。でも、そう聞かれると言うことは、知っているのがこっちでは自然なんでしょうか?
佐々木琲世
佐々木琲世
まあ……喰種が存在する世の中ですからね。CCGは人を喰らう喰種を駆逐出来る唯一の組織ですし
中島敦
中島敦
喰種?
こちらの世界について何も知らない敦君と、僕達について何も知らないハイセ君二人の会話は噛み合っておらず、聞いていて面白い。どちらも困惑しているし……。
影嶺 威吹
影嶺 威吹
(有馬さんからハイセ君の話を聞いた時は、敦君と似てる部分があるなあ〜とは思ったが、こうしてみると既視感が凄い)
影嶺 威吹
影嶺 威吹
説明なら、僕が代わりにしますよ。敦君は“此方の世界で目覚めたばかり”ですからね。CCGや喰種を知らないのも無理無い。其れに、貴方にもクインクス班にも近々協力して頂かないと行けませんし
佐々木琲世
佐々木琲世
やっぱり僕達のことをご存知なんですね。と言うか……先程ガレージで“異世界”とか“異能者”とか言ってましたけど、もしや本当に?てか、“協力”って……
影嶺 威吹
影嶺 威吹
今から話すことを信じるか信じないかは任せますが、話をするとまず一つ目。僕達は“異能力”と言う力を使える“異能者”と呼ばれる人間です。僕の異能はさておき、此処に居る敦君の異能は先程見た通りです
佐々木琲世
佐々木琲世
虎、になる?
中島敦
中島敦
さっきのは暴走状態で全身虎になってましたけど、本来制御出来ると身体の一部分を虎化して、身体能力は上がり、攻撃も可能になって戦えるんです
佐々木琲世
佐々木琲世
へぇ……!人狼の虎バージョン、みたいな?
中島敦
中島敦
少し、似てるかもしれませんね。多分
影嶺 威吹
影嶺 威吹
(似てるのか?)
中島敦
中島敦
でも情けないことに、僕は自分の異能を制御出来ない上、記憶もない状態で暴れていたせいか……元居た世界では食べてないのに尾ヒレがついて“人食い虎”と呼ばれ、区の災害指定猛獣にされたり、賞金七十億を賭けられ、色んな組織に追われたり……今回もまた暴走してしまったし……さ、さっきの人達のことも、きっと襲ってましたよね?記憶があまりなくて……すみません
佐々木琲世
佐々木琲世
い、いえ!皆無事でしたから。頭を上げてください。でも……賞金七十億て……凄い額ですね
中島敦
中島敦
僕もまさか自分がそんな高値で賭けられているとは知りませんでした。そのせいで、僕の周りにいる人達も危ない目にあったし……。僕はある人達に出会うまで、自分が何者で、自分が異能者だったことすら知らなかったんです
佐々木琲世
佐々木琲世
制御出来ずに暴走……。記憶もなく……自分が何者か分からず……周りの人を危険に、ですか
心当たりがあるのか、ハイセ君は少し哀しげな目をして視線を下に向けた。
僕は彼の事情を有馬さんから聞いて知っているので、敦君の置かれていた状況と自分を重ねてしまったのだろうと察する。
中島敦
中島敦
す、すみません。初対面で自分の話ばかりしてしまって……話、脱線してしまいましたよね
佐々木琲世
佐々木琲世
あ、いえ。むしろ話してくれた方が色々と知れるので有難いです
影嶺 威吹
影嶺 威吹
混乱した後から落ち着いたとは言え、まだ暴走状態後の余韻が残っているのだろう。無意識とは言え、自分の状況を口に出して整理するのは今の君には効果的とも言える。元居た世界の記憶の方は大丈夫かい?君はもう災害指定猛獣でもなければ、賞金七十億で色んな組織に追われる理由もなくなったし、異能も武装探偵社員でいる限り制御出来る。だから何も心配になる必要はないのだよ
中島敦
中島敦
はい……って、賞金七十億を狙った組織の中に威吹さんの……もがっ!?
異能を使って敦君を喋れなくし、何事も無かったかのように僕は話を元に戻した。
敦君は賞金七十億を狙った組織の中に、僕が属しているポートマフィアも居ただろうと言いたかったのだろうが、流石に此処でマフィアだと知られるのはまずい。
影嶺 威吹
影嶺 威吹
話を元に戻しますが、僕達はある異能者に狙われておりまして、その異能者の異能によってこの世界に飛ばされてしまったんです
佐々木琲世
佐々木琲世
人を違う世界に飛ばす能力も存在するんですね……能力の種類が豊富だ……
影嶺 威吹
影嶺 威吹
異世界に飛ばされる際に、仲間達が“カケラ”となって散らばってしまったんです。敦君が手にしていたこの“カケラ”が証拠ですね。今は無色ですが、異能者が封じられている場合はそれぞれ色がついていて光っています。
仲間達はこの“カケラ”の中に封印され、見つけなければ解放されない。加えて、この“カケラ”は僕達が元の世界に帰る為に必要な物なんです
異能が存在しない世界でこんなことを堂々言って居る自分を我ながら勇者だと思う。
傍から見たら妄想癖があるのか、漫画や映画の見すぎで二次元との区別が出来ない奴か、厨二病の類だろう。説明してて段々恥ずかしくなってきた。
佐々木琲世
佐々木琲世
カケラになって散らばったって……もしかして影嶺さんは一人でこれを探していたんですか?一昨日喰種に襲われた時も……。決して大きなものでも、目立つものでもないから探すの大変でしたよね?
影嶺 威吹
影嶺 威吹
そうですね。今回は運が良かったから見つけられましたが……
影嶺 威吹
影嶺 威吹
(話し相手がハイセ君で良かったわ。優しさが身に染みる。ついでにいえば、一昨日はカケラを探してたわけではないのだけれど、まあいいか)
影嶺 威吹
影嶺 威吹
喰種捜査官が多忙の身且つ命懸けの職業なのは知っていますが、同時に色んな場所に行き、情報も多く手に入るのは捜査官でもあると考えています。もしかしたら、喰種側にカケラを持っている者もいるかもしれませんし……。その中でもクインクス班は人より五感が効くと聞きましたので、仕事の最中にそれらしき物を見つけたら教えて頂きたいと思いまして
佐々木琲世
佐々木琲世
そのことなんですけど、誰からクインクス班や僕についての情報を……?
影嶺 威吹
影嶺 威吹
強いて言うなら“ある人”の紹介、ですかね。異世界に飛ばされた時にその人と会いまして……今も色々とお世話になってるんです。その方も捜査官の一人なので、その内わかると思いますよ
佐々木琲世
佐々木琲世
捜査官の一人……!?なら、僕の知ってる人かも知れないってわけですね……
影嶺 威吹
影嶺 威吹
それともう一つ。貴方達の前に、異能者が現れるかもしれません。敵の、ね
佐々木琲世
佐々木琲世
敵の異能者……其れは影嶺さん達をこの世界に飛ばした人ですか?
影嶺 威吹
影嶺 威吹
そうかもしれないし、ソイツの“仲間”かもしれません。もしかしたら、何らかの方法で喰種と手を組むかもしれない
僕が言うと、ハイセ君は険しい表情を浮かべ、黙って僕の話を聞いた。
影嶺 威吹
影嶺 威吹
喰種と異能者が手を組むとなると、異能によっては通常の捜査がより厄介で現実的な考えが通用しなくなります。それこそ、喰種を異空間に隠して匿うとか、人に触れただけで殺せるとか、異能は様々ですから。もしそうなれば、身体能力が高い捜査官でも、クインクスでも太刀打ち出来なくなる可能性が高まり、死者も増え、CCGが不利になるでしょう
佐々木琲世
佐々木琲世
魔法使いを相手にしているようなもの、なのかな。でも、言われてみれば……影嶺さんの話も一理あるね
影嶺 威吹
影嶺 威吹
そこで、先程の“協力”なんですけど……僕達も同じ異能者として、敵異能者を止めなければいけない。ハイセ君が良ければ、ヘタレではあるけど、月下獣の異能を持つ敦君をシャトーに置いてはくれませんか?
佐々木琲世
佐々木琲世
シャトーのことまで知って……って、ええ!?
中島敦
中島敦
ん”ん”!?
敦君にかけた異能を解くのを忘れていたが、気付かなかったフリをして僕は話を進めた。
影嶺 威吹
影嶺 威吹
捜査官の仕事は勿論通常通り行ってくれて構いません。万が一、敵の異能者が現れた時の為に敦君を置いてくれるだけで良いんです。皆さんが仕事に行っている間に、敦君は別行動でカケラを探せばいいですし。何より、僕が今仮住まいとしている場所は、先程言った捜査官が保護者代わりとなってお金含め色々とやってくれたものなので……。敦君は孤児院育ちの身故、お茶漬けさえ与えれば働いてくれますしね。返事は今日でなくてもいいので、連絡先だけ渡しておきますね
近くに置いてあったメモ用紙に、自分が常時持ち歩いているペンで電話番号を書いて渡す。
厨二病発言の次は押し売りセールスマンみたいな行為をしてしまったが、ここまで来たらもうヤケクソだ。強引なのは正直僕も好きではないが、許してくれハイセ君。
影嶺 威吹
影嶺 威吹
心配なら、クインクスの皆さんにも意見を聞いた方が良さそうですね
佐々木琲世
佐々木琲世
そう、ですね。まだ何も起きていない今、他の捜査官に異能者の話を広めたとしても、信じてくれるかどうか……
影嶺 威吹
影嶺 威吹
えぇ、分かってますよ。非現実的な話ですからね。けど、直に他の方々も知ると思いますよ。では、僕達は今日はこれで失礼しても?
佐々木琲世
佐々木琲世
あ、はい。有難う御座います。わざわざ一緒に来て頂いて
影嶺 威吹
影嶺 威吹
いえいえ。こんな話、まともに聞いて頂けただけでも、僕達からすれば一歩前に進めた訳ですから助かります
佐々木琲世
佐々木琲世
まぁ……僕は実際に異能を使う瞬間を目にしたから信じられたんですけどね。恐らく、現場で影嶺さん達のやり取りを見ていたクインクスの四人も信じてくれると思います
影嶺 威吹
影嶺 威吹
そう願います。それじゃあまた
最後に挨拶をし、敦君を連れて外に出てから異能を解く。敦君はようやく解放されたかのように「ぷはっ!」と息を吐いた。
中島敦
中島敦
ど、どういうことですか威吹さん……!
影嶺 威吹
影嶺 威吹
どうも何も、君が耳にした通りだ。全部本当の話だ
中島敦
中島敦
敵異能者と喰種が手を組むとか、何故そんなことが……?
影嶺 威吹
影嶺 威吹
その話は今晩の夕餉の時間に説明しよう。僕がこの世界で何をしたのかも、僕の世話をしてくれた人の話も……。だから今は何も聞くな。今のうちに質問する内容を考えて頭の中にまとめておきなさい敦君
中島敦
中島敦
わ……分かりました……
そんな話をしながら歩き、僕はタケさんにメールで“飯一人前追加頼んでも?”とだけ送って置いた。
影嶺 威吹
影嶺 威吹
(ハイセ君と敦君、身長ほぼ同じだし、有馬さんがハイセ君からもらってきた服は入るか。と言うか……)
影嶺 威吹
影嶺 威吹
敦君、警戒はしないのかい?僕、一応ポートマフィアの幹部で君が属している組織とは宿敵の関係なのだけれど
中島敦
中島敦
へ?あ、あぁ……最初は警戒してたんですけど……威吹さんって何処か太宰さんと似てると言うか、僕こっちの世界で目が覚めたばかりなので、今頼れるのは威吹さんしか居ないというか……すみません、頼りなくて
影嶺 威吹
影嶺 威吹
いや、頼り頼られる以前の問題として、良い判断だと思うよ。敵同士だからと、この状況でバラけていては解決出来るものも解決出来なくなる。何より、言うことを聞いて協力してくれた方が僕もやりやすい
中島敦
中島敦
そういうもんですか?後半は単純に僕が扱いやすい奴って意味にしか聞こえませんが
影嶺 威吹
影嶺 威吹
さて、どうだろう。ほら、行くよ
中島敦
中島敦
は、はい……

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