去年の夏。
俺は部活で1年生ながらエースとして活躍していた。
先輩からは“生意気”だの“顔がいいから”だの
いろいろ言われ続けた。
小学校からバスケが大好きでやってきただけなのに。
でもエースになったからには頑張らないと、
そう思ってみんなが帰ったあともひたすら練習をし続けた。
空も暗くなってきたので最後スリーポイントを
いれて帰ろうと決めた。
体育館の中でボールをつく音が響く。
ゆっくりと深呼吸をしてボールを投げた。
ボールは綺麗な弧を描きゴールに入る。
女子の声がしてその方を振り向くと
そこには見知らぬ女の子がいた。
くすくすと笑って彼女は言う。
A組か…体育とかでも一緒にならないから
みたことないのも当たり前か。
周りにいる女子と違って着飾ってなくて小動物の
ようだと思ったのが彼女の第一印象だ。
その日が俺と彼女の出会いだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!