12月31日 23時52分
残り10分ほどで色濃い一年が終わろうという時、
俺とあなたは混雑している甲板に出た。
たとえコートを何枚重ね着したって
冬の海風はそれを突き抜けてくるに違いない。
体温の高いあなたを抱き締めて
暖を取るのが精一杯だった。
反対に低体温どころではない俺に抱き締められて、
あなたは離れろと言わんばかりに震えている。
…俺はここ最近で初めて
あなたにハグを拒絶されたかもしれない。
ちょうど死ぬのには打って付けな
極寒の黒い海が目の前に広がっている。
どうせ飛び込んでも意味がないことを知りながら
俺はぼんやりと海原を眺めていた。
ふとあなたが指差した方向に顔を向けると、
甲板の人混みをスルスルと通り抜ける
一匹の黒猫の姿があった。
かなり昔に気まぐれで
猫か犬かを飼ってみたことがあるが、
あれはダメだ、寿命が短すぎる。
こちらが注いだ愛情の割に
呆気なく最期を迎えてしまう。
ただでさえ人間の寿命すら短く感じるのに
動物など以ての外だ。
そんなたわいもない会話をしていると
段々と周囲が騒がしくなり始め、
星が散らばる空を見上げれば
年明けを知らせる一発目の花火が上がる。
「おぉ…!」という歓声と共に
二発、三発と上がり続け、
あなたも目を輝かせて身を乗り出した。
あなたの大きな碧い瞳に反射する
色とりどりの花火は、
確かに俺が今まで見た中で
一番美しいと言っても過言ではない。
豪華な花火に夢中のあなたを撫でながら、
俺はずっと彼女の反応を伺って楽しんでいた。
終盤に差し掛かった黄金色の花火が
海面に散るのを眺めていると、
あなたも同様に夜空を見上げたまま
「ユンギ様」と俺の名を呟いた。
どこか照れ臭そうに話すのが愛らしくて、
思わず笑みがこぼれる。
風になびいた彼女の髪を耳にかけてやると、
あなたは俺の手に頬をすり寄せた。
踵を上げたあなたと唇を重ね合わせた時、
同時に一番大きな最後の花火が打ち上がる。
恥じらいにほんのり頬を赤らめているのが
花火の黄金に照らされていた。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。