明るげな声と華やかな笑顔でクラスメイトに挨拶する
嘘だとも知らずに、周りの人は向けられた笑顔に応える
窓側にある自分の席に座る
隣の席の人にも挨拶を欠かさない
周りからよく思われなければ、キャラを作っている意味がない
朝日に照らされる南原くんは、きっと性別さえも凌駕するだろう
本当に可愛らしい顔立ちをしている
彼はクラスの中心的存在であり、私はNo.2みたいな感じだ
『嘘』では『本当』を超えることはできない
そんな事実を打ち付けられた気分だ
キーンコーンカーンコーン
のどかで平和な会話をしているうちにチャイムが鳴った
そんな先生の冗談にクラスがくすくすと笑う
もちろん、私もいつものように、にこにこと笑う。
前の人からもらったプリントを見るまでは。
先生の声が途中までしか聞こえなかった
はぁ、こまったな
『授業参観』とか…
隣の可愛らしい本物は、万人受けの笑顔を浮かべている
どうにかして声色を変える
耐えろ、気持ちに流されるな
必死に表情筋を上げる
顔に張り詰めていた力が一気に抜けた
今の私の顔は
太陽のような笑顔とは遠くかけ離れている
きっと、酷く歪んだ、見るにも耐えない
『化け物』という言葉がよく似合うだろう
キーンコーンカーンコーン
目の前にいる『本物』が何かを言いかけ、チャイムが鳴った
ひどく驚いた顔だ
流石に気づかれただろうか
クラスのNo. 1に気づかれるとか、終わったな
でも
なりきるしかない
「目にゴミが入ったから顔が歪んでしまった」
到底、信じるとは思えないが、何もしないよりはいいだろう
いつもの南原くんだ
まるで、さっきのことがなかったかのようだ
まさか、この無理やりな嘘を信じた…!?
それとも、なにも思っていない…?
ゴミなんて入っていないが、一応目を瞑り顔を近づける
なにも入っていないので、なにも取れていないであろう
ずっと無言だったので、片目だけ開けて様子を伺う
南原くんは慌てふためき、顔を隠した
隠してるとはいえ、少しだけ見える顔は火照っていた
そういえばさっきから、喋りかけても無言になることが多かった
しかも、顔が少し赤い。ということは体調が悪いのだろうか
体調が悪いとなると、保健委員を呼んでおいた方がいいだろう
途切れ途切れになる言葉に、余計心配になる
ほだらかな笑顔を見せる南原くんの頬は、まだ少しだけ赤かった
突然言われた言葉に声が出た
「優しい」…?
私は、今、人に優しくできたのだろうか?
今までこのキャラで言われてきた言葉は
「元気」「可愛い」「明るい」
「キモい」
最後のは1人のカス野郎だけである
「優しい」は一度もなかった
どうすればいいか、わからなかったのだ
動揺する私に、南原くんはハッとしている
え、そこ?
自然と笑い出していた
慌てる南原くんは、なんとも可愛らしかった
ニコッと笑いかける
不思議と、あまり疲れなかった
慣れないのか、ぎこちなく言われた自分の名前に、心臓が浮くような感覚があった
急用を思い出し、席を外す
決して今まで経験したことがない感覚に驚いたわけではない
優しくかけられる声を背に走り出した
あったことを思い出し、口角が自然と上がる
光に照らされた少年は、ほだらかな笑顔を浮かべた


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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!