❥ 赤 side
不安そうに覗き込むのは
俺の好きな人 。
そう好きな人のはず 。
自分の気持ちがいちばん分からない 。
ほとけっちのことが好き 。
本当に好きなはず 。
だったら
ないくんへのこの気持ちは何 、
俺はどんな表情で
ないくんを見ているの?
俺は 、どんな感情でないくんと居るの?
俺の中のないくんってなぁに?
ふと 、声が聞こえて
我に返る 。
ないくんと目を合わせると 、
安心したように微笑んでくれた 。
そうむすっとした表情で言われながら
ほとけっちに抱きつかれる 。
その顔が捨てられた子犬みたいで
慌てて頭を撫でる 。
するすると頬を撫でられて 、
心配げに覗き込まれる 。
桃色の瞳と目が合えば 、
きっと 、彼の瞳に映っただけで
顔を赤くする俺は第三者から見たら 、
滑稽で哀れな人なんだろうな 。
❥ 水 side
自分でも 、何があったのか分からない 。
自分がおかしいのかな 、
という錯覚さえ覚えるほどに 。
そう聞くと 、
頭にはてなマークを浮かべて 、
真っ赤に染った顔を晒すりうちゃん 。
なに … 、それ 。
ないちゃんが去っていった方を
ぽ ~ っと見つめるりうちゃん 。
僕がいくら話しかけても
ただ一点集中 。
ねぇ 、待ってよ 。
置いていかないで 。
僕も見て 。
僕も君の視界に入ってるって安心させてよ 。
お願いだから 、答えてよ 。
お願いだから 、僕も見てよ 。
そう言って 、抱きしめてみると
ごめんね 、と優しく撫でてくれた 。
けど 、僕を見てない 。
君の目線を強引に奪う 。
すこしまだ僕にチャンスがあるって思わせて 。
きみの中にまだ居るって安心させて ?
もう遅かったんだと後悔するのに 、
人間は時間がかからないって
どこかで聞いたことがあるような 。
自分が滑稽だって認識するのに 、
抗いたくなるものだって 、
どこかで聞いたことがあるような 。
願わくば 、
君のその想いに気づきたくなかったな 、
なんて 笑
そう考える僕はきっと 、
抗いようがないくらい滑稽なんだね 。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!