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第1話

後悔
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2026/01/25 10:00 更新
『ねえヒナ。ヒメ、もうすぐ消えちゃうんだ』
唐突に言われた一言。あまりに急だったから、体の動きが止まった。
「…なにそれ〜」
どう返していいか分からなくて。嘘だと言って欲しくて。ヒメの顔も見ずに呟いた。
『……じょーだん!…帰ろ、ヒナ』
ヒメに手を取られ、やっとヒメの顔を見た。淋しさを感じる笑顔をしていた。その顔を見て、冗談ではないことを察してしまう。どうしてちゃんと返事をしなかったんだろう、と少しの後悔が胸を通り過ぎていった。きっと今笑っているのは、ヒナに心配をかけないためだろう。話を逸らしたのも、なんとなくヒナの表情を見て察したからだろう。
「…うん、帰ろ」
ピリリリリリリ…ピリリリリリリ…

目覚まし時計の電子音。だるい体を起こして時計を見る。
「……はっ…!?」
いつもなら家を出る10分前。布団を大袈裟に退けて、急いで制服に着替えた。
「おかしいなぁ…いつもならヒメがモーニングコールしてくれてるのに…」
そんなことをぶつくさ言いながら、顔を洗ったりと朝の支度を早急に済ませた。
ふと、昨日ヒメが言っていたことが浮かんできた。
『ヒメ、もうすぐ消えちゃうんだ』
そんなわけない。消えるなんて、ありえない。ヒナは妖精でも天使でもなんでもない。普通の人間だ。そう、ヒナは。…ヒメは、そうじゃないんだろうか。少し昔のことを思い出す。
その日は、一年に一度、あるかないかの豪雨だった。親と逸れて迷子になって、1人で公園の遊具の下で泣いていた時だった。
『…?ねえ、だいじょうぶ?』
ヒナと大して変わらない背丈。自分とは違う桃色の髪。
「うっ…グスッ.ヒグ..ぅん゛っ」
嗚咽で途切れ途切れになりながらも、返事をしないと失礼だからきちんと返事をした。
『…なんでここにいるの?』
それはこっちのセリフだと言いたくなるが、今は1人になりたくなくて、少しづつ話した。
「グスッ…ママとっ、逸れちゃって……迷子にっズビッなっちゃ…て…」
泣きながらだから聞き取りにくいだろうに、誰とも知らないヒナの話に耳を傾けてくれた。今思えば、この時から好きだったのかな…

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