次に風柳を見かけたのは、放課後の訓練場だった。
広い空。
乾いた地面。
そして、吹き荒れる風。
強風が渦を巻き、空気が唸る。
まるで目に見えない刃のように、空間を切り裂いていた。
その中心に__________先輩がいた。
片手を伸ばし、静かに呼吸を整えてている。
長い髪が激しく舞うのに、その姿勢は少しも揺れない。
俺は思わず足を止めた。
ただ風邪を操っているわけじゃない。
風が彼女に従っている。
いや、__________風が彼女を守っているように見えた。
次の瞬間。
突風が爆ぜた。
空気が弾け、衝撃が地面を叩く。
けれど先輩の表情は穏やかなまま。
肩がびくりと跳ねた。
振り返った先輩が、少し得意そうに笑う。
その笑顔を見た瞬間、胸が締め付けられた。
そう言って、先輩は軽く手を差し出した。
俺は一瞬迷い、その手を取った。
触れた瞬間、
やわらかい。
温かい。
思ったよりずっと細い。
けれど、力強かった。
次の瞬間、周囲の風が変わる。
さっきまで荒れていた空気が、静かに、優しく流れはじめた。
まるで、2人だけを包み込む結界みたいに。
俺は思わず声が漏れた。
先輩は繋いだままの手を見下ろした。
その視線に気づいて、俺の心臓は跳ねる。
離すべきか?
いや、離したくない。
沈黙が落ちる。
風だけが、静かに2人の間を流れていた。
彼女の指が、ほんの少しだけ強く握る。
その瞬間、俺の胸の奥で何かが溶けた。
__________あぁ。
これが、
これが、恋なのかもしれない。
先輩が静かに言う。
俺は迷わず答えた。
そして、少しだけ視線を逸らして続ける。
次の瞬間、そよ風がふわりと2人を包む。
優しく。
静かに。
抱きしめるように。
先輩の声は、風に溶けそうなくらい小さかった。
けれどはっきり届いた。
つないだ手はまだ離れない。
風も止まない。
そして気づく。
先輩の隣は、こんなにも温かいのかと__________。
𝙉 𝙚 𝙭 𝙩 ︎ ⇝︎











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。