スティーブside
あの夜ー、ニヤリと皮肉げに笑った9番の
顔が頭から離れない。
あの、癖になるような歌も。
ステ「9番、あの夜歌ってた神?が出てくる歌、聴きたいんだ。歌ってくれる?」
リアム看守は今日は居ないし、兄貴は監視の役目がある。
だから俺は、夜、9番を連れてきた。
ク「?…あぁ、神っぽいな、ですね」
スティ「うん、それ!」
話しながら椅子に座らせて、向いに座る。
スティ「俺のことは無いものとしてもらって」
ク「ふふっ、はい。分かりました」
一瞬、きょとんとした9番はふわりと笑って見せた。
あぁ、綺麗だな。
ク「じゃあ、いきますよ」
そう言ってから、息を吸った。
そこにはもう、あの純粋で天然な9番はいなかった。
ク「愛のネタバレ『別れ』っぽいな
人生のネタバレ『死ぬ』っぽいな」
視線が怠そうに下げられる。
くはっ、と軽く嘲るような笑いを含んで。
ク「何それ意味深でかっこいいじゃん
それっぽい単語集で踊ってんだ失敬」
ニンマリと効果音のつきそうな顔で笑った。
どこか暗い、闇を感じる笑み。
さっきまで、歌い始める前は可愛いと思っていたけど、今はかっこいいと思った。
ク「とぅとぅるとぅとぅとぅる風
とぅとぅるとぅとぅとぅる風
とぅとぅるとぅとぅとぅる風
ぽいじゃんぽいじゃん」
風、流れるように言う。
さっきより少し高く歌われる。
ぽいじゃん、は少し嘲る雰囲気が強く。
ク「とぅとぅるとぅとぅとぅる風
とぅとぅるとぅとぅとぅる風
とぅとぅるとぅとぅとぅる風
神っぽいな」
黒い笑みがどんどん深まる。
猫のように尖った白い歯、牙?が覗く。
ぺろり、と1度だけ赤い舌が唇を舐めた。
ク「もういいぜもういいぜそれ
もういいぜもういいぜ
逆に興奮してきたなぁ」
呆れたような顔で嗤いながら。
恍惚に近い表情で笑って、口元を片手で覆うようにした。
ク「おっきいねおっきいね夢
おっきいねおっきいね
景気いいけど品性はTHE END」
ニコニコと笑う。
目元も弧を描いている。
いつものにこにこではなく、ニコニコしている。
目のハイライトが消えた。
ク「“God ist tot”」
下から上目遣いに、翡翠に近い瞳が前を見据えて。
笑みの消えた顔で。
低く、紡がれた言葉が耳に残った。
ク「神っぽいなそれ卑怯神っぽいなそれ
アイウォンチューウォンチュー
IQが下がってく感じ」
ニコニコとした笑みが再び戻り、笑う。
下がっていくのを示すように、両方の人差し指が下を指さす。
愉快そうに。
ク「アイヘイチュー ヘイチュー
害虫はどっち?」
傾げられた首と、サラリと揺れた蒼銀の髪。
ゆるりと浮かんだ黒い笑み。
目にハイライトはない。
ゾクリとする。
ク「その髪型 その目 その口元
その香水 そのメイク アレっぽいなそれ
比況 アレっぽいなそれ」
あはっ、と控えめに笑ってニコニコと。
アレ、と目が思い出すかのように右上を見る。
早口言葉…に聞こえる。
ク「その名言 その意見 その批評
そのカリスマそのギャグ そのセンス
神っぽいなそれ
卑怯ぽいな ぽいな ぽい 憧れちゃう!」
アハッ、と笑うように。
にいっと口元は弧を描き、愉快そうに。
わざとらしく高くなった声。
憧れちゃう!と右手で右頬に触れる。
両手でやるとぶりっ子ポーズになるやつ。
ク「とぅとぅるとぅとぅとぅる風
とぅとぅるとぅとぅとぅる風
とぅとぅるとぅとぅとぅる風
ぽいじゃんぽいじゃん
とぅとぅるとぅ、とぅとぅる風
とぅとぅるとぅとぅとぅる風
とぅとぅるとぅとぅとぅる神っぽいな」
1回噛んだ。
嘲るようなところは変わらない。
神っぽいな、だけが低く、冷たい目で見据えながら発せられた。
口元に笑みは残ったまま。
ク「メタ思考する本質は悪意?
人を小馬鹿にしたような所為」
本気で疑問だと首を傾げ、さっきよりも暗く。
響くような声で。
ク「無為に生き延びるのは難しい
権力に飲まれて揺らぐ灯り
神を否定し神に成り代わり
玉座で豹変する小物達」
笑みは無くなっていた。
無意識に背筋が伸びる。
圧を感じる。
ク「批判に見せかけ自戒の祈り
Do you know?」
ニヤリと陰のある笑みを浮かべた。
それは、それは愉快そうに。
ク「何言ってんの?それ ウザイ
何言ってんの?それ
意味がよくわかんないし 眠っちゃうよ マジ」
怠そうに、ウザイというのがよく伝わる表情で。
鬱陶しそうに。
は?というかのようなトーンで。
ゆるゆると首を振った。
ク「飽きっぽいんだ オーケー
みんな飽きっぽいんだオーケー
踊れるやつちょうだいちょうだいビーム」
低く、ゆっくりと。
声に重厚感がある。
漸く笑ったと思ったら、もはや乾いたような笑みだった。
ク「きっしょいねきっしょいねそれ
きっしょいねきっしょいね
逆にファンになってきたじゃん」
さっきとは一転して、愉快そうに。
少し高くなったトーン。
再び、口元を片手で覆うようにして、その影で唇を赤い舌が舐めた。
ク「ちっちゃいねちっちゃいね器
ちっちゃいねちっちゃいね
天才故孤独ですね
かっけぇ…かっけぇ…」
嘲笑いながら、見透かすように。
ク「“God ist tot”」
一回目より暗くない。
ク「神っぽいなそれ卑怯神っぽいなそれ
“My God”
超健康 健康 言い張ってくたばってく感じ
ヤケっぽいなそれ畢竟
ヤケっぽいなそれ“MyGod”
もう哀愁哀愁 エピゴーネンのヒール」
明るくなったように、声にそれが出る。
愉快そうな、おもしろがっているような。
ク「そのタイトルその絵そのストーリー
その音楽その歌そのメロディ
アレっぽいな それ 比況 アレっぽいなそれ
その名言 その意見 その批評
そのカリスマ そのギャグ そのセンス
神っぽいなそれ卑怯ぽいな ぽいな ぽい
憧れちゃうわ!」
またも、わざとらしく。
早口言葉…違う、歌か。
鬱蒼とした笑みはなりを潜め。
ハイトーンな声と、ニコニコした顔。
ク「とぅとぅるとぅとぅとぅる風
とぅとぅるとぅとぅとぅる風
とぅとぅるとぅとぅとぅる風
ぽいじゃんぽいじゃん
とぅとぅるとぅとぅとぅる風
とぅとぅるとぅとぅとぅる風
とぅとぅるとぅとぅとぅる神っぽいな」
声が落ち着いてくる。
ずっとニコニコしていたのに、
最後だけ、諦めたような笑みを浮かべた。
ク「愛のネタバレ『別れ』っぽいな
人生のネタバレ『死ぬ』っぽいな
全て理解して患った
無邪気に踊っていたかった 人生」
諦観した目で、事実を述べるように。
どこか遠くを見ながら。
ふっ、と儚げに笑い、
ゆっくりと目を閉じた。
ク「?どうしたんですか、スティーブ看守」
スティ「!…いや、流石だね、9番」
ク「ありがとう、ございます?」
不思議そうにお礼を言う姿は先程までとは全然違って。
これは、はまるなぁ、なんて思った。
リクエストありがとうございました
(*・ω・)*_ _)ペコリ











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!