彼女が再び深い眠りに落ちたあとも、
私はしばらくその場から動くことができませんでした
掌に残る、彼女の微かな体温
『ハヤトにいさま』と呼んだ、あの震える声
それは、私がこの数年間、自らに課してきた『他人』という名の規律を、
跡形もなく粉砕するには十分すぎる一撃でした
彼女が意識を失いかけているのをいいことに、
あろうことか『兄』としての欲求を優先させてしまった
もし彼女が、今の私の言葉を、温度を、記憶の隅でも留めてしまったら
彼女の箱庭を、私の身勝手な執着で汚してしまったことになります
病室を出て、廊下のベンチに腰を下ろすと、
冷たい壁の鑑賞が私の背中を現実に引き戻します












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。