第9話

七話:静寂の共犯者①
15
2026/02/15 03:19 更新






彼女が再び深い眠りに落ちたあとも、


私はしばらくその場から動くことができませんでした


掌に残る、彼女の微かな体温



『ハヤトにいさま』と呼んだ、あの震える声


それは、私がこの数年間、自らに課してきた『他人』という名の規律を、


跡形もなく粉砕するには十分すぎる一撃でした








加賀美 ハヤト
加賀美 ハヤト
⋯⋯ふふ、何が『完璧な大人』ですか






彼女が意識を失いかけているのをいいことに、


あろうことか『兄』としての欲求を優先させてしまった




もし彼女が、今の私の言葉を、温度を、記憶の隅でも留めてしまったら





彼女の箱庭を、私の身勝手な執着で汚してしまったことになります







病室を出て、廊下のベンチに腰を下ろすと、


冷たい壁の鑑賞が私の背中を現実に引き戻します

プリ小説オーディオドラマ