一旦、状況を整理してみよう。
今朝からオレは何者かの声が聞こえるようになった。
その声はみんなには届いてはいないようで、オレ自身のみ
が聞こえる声……、
その声の正体はまだ確証がなく間違っていなければ、
にはなってしまうが "天馬 司" 自身、つまりはもう一人の
オレ。
ただ一つ難点があるといえばそれは
────── オレがかつて演じた ”ブレス” という、国の
封じられた禁忌「呪いの花」によって絶望の底に堕ちて
しまった王子の姿だということ。
何故、よりにもよってあの役の姿を……
座り込んだベンチから飛び出し尻もちをついたオレを
じとり、と呆れた様子で見つめる彼女の名は
“ 草薙 寧々 ” 。
オレの所属する劇団 ワンダーランズ × ショウタイムの
歌姫として名を轟かせており、同じ神山高校の生徒と
しても勉学に精を出している。
類の詳細を省いたのは…… 日々の行いが悪いからだ。
序盤に関しては全く聞いていなかったようだが、
ブレスや姿の単語を聞かれていたとなると隠し通すのは
難しい。
どうしよう。寧々に素直に頼ってしまおうか。
心配そうに眉を下げ見守る寧々の隣で真逆に じとり、と
冷酷な目線をこちらに向けるブレスの姿から目線を外すと
一呼吸して演技をしてみる。
寧々の姿が見えなくなった後、 ”一人”ベンチに座りながら
中庭で自分の声と冬の冷気が残る。
ぽつり、と少し淋しげに呟いて。
少なくとも 寧々の悲しむ表情を見ずに済んだんだ。
ブレスの言う通り、これが─── スターとして相応しい
選択。
なんだよな 。















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。