第9話

7.バラバラになった8人 ①
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2025/07/04 23:09 更新
_九州家
福岡
皆っ!!!
熊本
あッ、ふ、福岡ぁ...ッ!!
帰宅後一番に目に入ったのは、荒らされた室内と、そこでぐったりとした宮崎を抱きかかえる熊本の姿だった。
普段あまり感情を表に出さない彼の顔は、恐怖や混乱が入り混ざったようなものになっていた。
目尻には涙が溜まり、声も震えている。
福岡
く、熊本!大丈夫か?何があった、?皆は...?
靴を脱ぎ捨て、彼らの元へと近付く。
信じ難い、信じたくないこの状況に、思わず質問が口から突いて出る。
熊本
あ...えっと...液体が撒かれて俺と宮崎以外どこか...佐賀はアイツに連れてかれて、鹿児島達は...ぁ、大分は沖縄を庇って...
当たり前のことではあるが、唐突に起こったこの惨劇を、彼もよく理解できていないようだ。
俺が詰め寄ってしまったこともあり、熊本の説明はとても拙いものになっていた。
福岡
っごめん、ゆっくりでいいから...な?
熊本
ぅ...ごめん...
彼の抑えきれなくなった涙が頬を伝う。
背中をそっと撫で、彼が落ち着くのを待った。












熊本
......もう大丈夫、話すよ
数分後、熊本は少し落ち着いた様子を見せた。そして、何があったのかを話してくれた。
話の内容はこうだった。

まず、家に謎の人物がやって来たこと。怪しいと思った皆が居留守を使うも、そいつは窓を割って押し入り、紅赤の液体をばら撒いてきたこと。
そして、大分と沖縄は消え、佐賀はやって来たそいつに連れ去られたこと。長崎と鹿児島に守られた熊本と宮崎は無事だったが、その守ってくれた2人の行方が分からなくなったこと...
福岡
......
酷く後悔した。もっと早く行動していれば、何かしら結果は変わっていたかもしれない。
皆が必死に戦っている時も、俺は話を聞くだけですぐに行動出来なかった。

熊本から話を聞いた後も、苦しい表情を浮かべる彼らの体をただ抱き寄せるだけで、何も言うことが出来なかった。何を言えばいいのか分からなくなった。いざという時に、何故俺は何も出来ないのだろうか。
皆を守れなかった悔しさ、謎の人物への怒り...様々な感情が頭の中で渦を巻く。







こんな俺が、本当に九州を代表していていいのだろうか...
_九州地方南部
鹿児島
くっ"...はぁ"...っ、
鹿児島
ここまで来れば...
長崎
ぅ"、はッ...はぁ"...ッ
鹿児島
......
鹿児島
ごめんなさい......
...私だけが無事なのは、きっと宮崎のおかげだろう。
宮崎の首にかけられている勾玉のネックレス。あの家から逃げ出す直前、彼女が渡してくれた。
彼女曰く、ニニギ水晶とやらで作られたこれには不思議な力が込められているとか。

...彼女からは色々な神話を聞いたものだ。話している時の彼女の目はとても輝いていて、楽しそうだった。
私もそうだ。彼女の笑顔を見るのが好きだった。
あの顔は、これからも見ることが出来るものだと勝手に思っていた。...それなのに。
長崎
ふ"ッ、うぅ"...ッ
九州はバラバラになってしまった。宮崎も、沖縄たちも...
皆を助けることが出来なかった。
辛うじて一緒に逃れることが出来たのは長崎だけだ。
しかし、その長崎も液体によって苦しめられている。
普段なら能力を使って何事もなかったように振る舞う長崎だが、今は呼吸すらままならない様子だ。
鹿児島
(私に何か出来ることは...)





鹿児島
...あっ、あれ...
辺りを見渡すと、微かに小さな小屋のようなものが見えた。
なんだか懐かしい感じがする。

何か使えるものがあるかもしれない。そんな希望を抱いて、私たちはそこへ向かうことにした。
_???











____!







___くん!!






沖縄
大分くんッ!!
大分
......ん...?
薄暗い視界の中、俺を呼ぶ声が聞こえたような気がした。重い瞼を押し上げると、そこには大粒の涙を流しながら俺の名前を呼び続けている沖縄の姿があった。
沖縄
!良かった、起きたぁ...
俺が目を覚ましたのを見て、沖縄は安堵の表情を浮かべた。
そして、まだ上手く力が入らない俺の体をゆっくりと起こしてくれた。ぼんやりとした頭で辺りを見渡してみても、暗闇に包まれたような景色が続くばかりで俺たち2人以外に何も見えない。
大分
あ...沖縄は体調とか大丈夫か?怪我...ないか、?
沖縄
うん、!僕は全然大丈夫だよ、!
沖縄
...ごめんなさい、僕のせいで......大分くんまで...っ
1度は止んだかのように見えた涙がまた溢れ出し、彼の頬を濡らしていく。
大分
あーそう泣くなって、!
液体を被ったのは俺の意思だ。俺が勝手にやったことだ。沖縄が責任を感じることはなにも無いよ
沖縄
......うん、
少し黙ってから、沖縄は口角を上げて小さく返事をした。だけど、恐らく心の中ではずっと申し訳なさを抱え込んでいるだろう。彼はあまりにも優しすぎる。
むしろ助けることが出来なかったこちらの方が申し訳ないくらいなのに...
何故沖縄たちがこんなに辛い思いをしなければいけないんだ。 こうなったのも全部アイツのせいだ......
大分
......
大分
(今はアイツを恨んでても仕方がない...)
大分
なぁ沖縄、ここについて何か分かってることとかあるか?
沖縄
え?いや...どこに行ってもずっと真っ暗で、出口とかも見つからなかった、
大分
そうか...
危険な目に遭うようなものが無いのはいいことだが...何も無さすぎるのも困る。

するとまた、沖縄が口を開いた。
沖縄
...ねぇ、僕たち、どうなったのかな
大分
え?
沖縄
ほら...あの時、赤?ピンク?の液体かけられてさ、僕たち身体消えていっちゃったでしょ、?
大分
あぁ...
沖縄
なのに、今ここに存在できてるというか...
触れたり、喋ったり出来るのってなんでかな〜って...
大分
確かに...ここは消えた奴が来る場所なのか?
沖縄
そうなのかな...
もしそれが本当なのだとしたら、液体がかかったのは俺たち2人だけで、他の奴らは無事なのだろうか。1番に液体を被ってしまったから、あの後何が起こったのか何も分からない。我ながら本当に情けなさすぎる。
沖縄
他の皆、大丈夫だと良いけど...
大分
そうだな...きっと大丈夫だ
大分
だから、俺たちも頑張ってここから出て、元の場所に戻ろう
沖縄
!うん...!

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