大学最後の文化祭の日。キャンパスは春の光と花々の香りに包まれ、屋台や展示で賑わっていた。聖奈はまだ少し体調が不安定で、歩くと胸が早く打つこともある。だが、璃音が隣で手を握り、時折肩に手を回して支えてくれることで、安心して笑顔を作ることができた。
璃音はそう言って、手をぎゅっと握り返す。聖奈の小さな手の温もりが、二人の距離をさらに近づける。
最初に二人が向かったのは屋台コーナー。聖奈は無理せず座れる場所を選び、璃音が一つずつ楽しそうに買ったものを手渡す。甘い綿菓子やフルーツジュースを二人で少しずつ分け合い、笑い合う。
その言葉に聖奈は頬を赤くして微笑み、自然に璃音に体を寄せた。
次に、展示や演劇を観に行くときも、璃音は常に聖奈の体調に気を配る。階段や人混みでは腕を回して支え、疲れたら無理せず休ませる。
その安心感から、聖奈の表情は穏やかで幸せそうだ。璃音はその顔を見て、自然に笑みを浮かべる。
夕方、キャンパスの広場で行われるミニコンサートを観に、二人は芝生に座った。聖奈は少し疲れ気味で、璃音の肩に頭を預ける。
璃音はそう言い、聖奈の髪をそっと撫で、額に軽くキスをする。甘くて切ない、確かな愛情のキスだ。
夜になり、キャンパスはライトアップされ、屋台の明かりやステージの光が二人を柔らかく包む。聖奈は疲れた体を璃音に預けながら、静かに囁いた。
聖奈は小さく笑いながら、璃音の頬に手を添え、唇を重ねる。体調の不安を忘れるほど甘く、長く、心も体も震えるキス。璃音も優しく応え、二人の息が重なり合う。
夜風が二人の髪を揺らし、桜の花びらが舞う中、二人は手を握り、抱き合い、互いの体温と心の温もりを確かめ合う。
文化祭の賑やかさも、人混みも、すべてが二人にとっての舞台装置のようだった。笑い声や音楽、香り、光――すべてが二人だけの甘く切ない世界に溶け込み、最後の大学生活を最高に彩る。
その夜、家に戻った二人は、布団の中で腕を絡め合い、今日の思い出を語りながら眠る。まだ体調が完全ではない聖奈も、璃音の腕の中なら安心して休める。手を握り合い、額を寄せ合い、互いの心を確かめながら、二人だけの幸せな時間は続いていった。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!