第101話

番外編2
9
2025/09/13 15:55 更新
ある春の夜、璃音は勤務を終え、疲れた体を引きずりながらもまっすぐ帰宅した。
マンションのリビングには、ソファで眠り込む聖奈の姿。まだ衣装合わせの仕事帰りなのだろう。メイクの残り香とシャンプーの匂いが混ざる彼女の寝顔は、照明の下でひどく愛おしかった。

璃音はそっと彼女の髪を撫で、静かに囁く。
名前:氷川 璃音(ひかわ りおん)
名前:氷川 璃音(ひかわ りおん)
……聖奈ちゃん、起きて。今日はどうしても言いたいことがあるんだ
聖奈はまぶたをゆっくり開け、少し眠そうに微笑んだ。
神城聖奈(かみしろせいな)
神城聖奈(かみしろせいな)
璃音……おかえり。今日も遅かったね。大丈夫? 疲れてるでしょ
名前:氷川 璃音(ひかわ りおん)
名前:氷川 璃音(ひかわ りおん)
疲れてる。でもね、今じゃなきゃダメなんだ
璃音は小さく息を整え、ポケットから小さな箱を取り出した。手のひらで震えるその箱を見て、聖奈の目が大きく開く。
神城聖奈(かみしろせいな)
神城聖奈(かみしろせいな)
……璃音、それ……
璃音は膝をつき、まっすぐに彼女を見上げる。
名前:氷川 璃音(ひかわ りおん)
名前:氷川 璃音(ひかわ りおん)
聖奈ちゃん。大学の卒業式の日に“結婚してください”って言ったの、覚えてる?
神城聖奈(かみしろせいな)
神城聖奈(かみしろせいな)
もちろん、忘れるわけないよ
聖奈の頬に涙が浮かぶ。璃音は一呼吸置き、震える声で続けた。
名前:氷川 璃音(ひかわ りおん)
名前:氷川 璃音(ひかわ りおん)
私は医師になって、毎日たくさんの命と向き合ってる。その度に思うんだ。人の命は儚いって。だからこそ、絶対に後悔したくない。……聖奈ちゃん。君を愛してる。何があっても、君の一番近くで生きたい。だから……
小さな箱を開けると、シンプルで細身のリングが月明かりに光った。
名前:氷川 璃音(ひかわ りおん)
名前:氷川 璃音(ひかわ りおん)
聖奈。私と結婚してください
聖奈は口元を手で覆い、涙をこらえきれず首を振った。
神城聖奈(かみしろせいな)
神城聖奈(かみしろせいな)
璃音……私、こんなに忙しくて、体調だって完璧じゃないし……aespaの仕事だって、カリナ様の隣にいる毎日で……きっと迷惑かけちゃう。それでもいいの?
璃音は即座に首を振った。
名前:氷川 璃音(ひかわ りおん)
名前:氷川 璃音(ひかわ りおん)
いいに決まってる。迷惑だなんて思ったこと、一度もない。聖奈ちゃんがどんな世界にいても、私の“帰る場所”は君だけなんだ
涙を溢れさせながら、聖奈は小さく頷いた。
神城聖奈(かみしろせいな)
神城聖奈(かみしろせいな)
……璃音。私も、ずっと言いたかった。憧れの人はいるけど、愛してるのは璃音だけ。帰りたい場所は璃音の胸の中だけ。……結婚、してください
璃音は指輪を彼女の左手薬指にはめ、聖奈を強く抱きしめた。
名前:氷川 璃音(ひかわ りおん)
名前:氷川 璃音(ひかわ りおん)
ありがとう……ありがとう、聖奈ちゃん……
神城聖奈(かみしろせいな)
神城聖奈(かみしろせいな)
こちらこそ……璃音……ずっと、ずっと一緒にいて
二人は涙で濡れた唇を重ねる。疲労も不安も未来の忙しさも、その瞬間だけはすべて溶けて消えていった。
外では春の夜風が街を吹き抜けていたが、部屋の中は二人の温もりで満ちていた。

その夜、璃音と聖奈は改めて誓った。
――どんな世界にいようとも、互いが互いの唯一の帰る場所であることを。

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