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第1話

優しさ
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2026/03/11 18:50 更新


休日の昼間、日車の仕事が忙しくなかなか休みが合わなかったなかの休み。

こういうときはデートなど行くのだろうが、あなたも日車も2人だけの時間を楽しみたい派で朝からずっとソファでピッタリくっついている。






日車の肩はいつもより力が抜け、顔もうっすら笑みが浮かんでいる。
仕事で何時間も人間の醜さを見続けてきた後だと、こういう静かな空間は日車には妙に沁みていた。

「日車さん、夕飯何食べたい?」

日「あなたが作ったものなら、俺はなんでも食べたい。」

「嬉しいけど、それはそれで地味に困るやつ。」

日「そうか…そうなのか…。」

日車は顎に手を添えて考え込んでいる。






ふと、あなたは日車を見つめながら言う。

「疲れてる顔してるね。お仕事大変だもんね。」

日「そうだな。そうかもしれない。」

実際日車は、曖昧な真実に、平気で嘘をつく人間に食傷していた。

時々思う。人間というものは、本当に救いようがないな、と。

だが——


日「きみといると、妙に気が緩む。」

「それはいいこと?」

日「そうかもしれないな。」

間違いなくあなたの存在は日車にとって光のようなものだった。ただ眩しい虚無が広がるような光ではなく、心を温かな光で包み込むような、そんな光。





日「あなた」

「なに?」

日「きみは…少し俺に甘すぎると思うんだ。」

「甘い?」

日「優しすぎる、と言うべきだろうか。」

淡々とした声で続ける。

日「俺が仕事で帰りが遅くなろうと寝ずに待つ。文句ひとつも言わず、むしろ労いの言葉をかけてくれる。」

日「普通はここまでしないと思うが。」


「そう?」

日「そうだ。」

即答だった。



日車は今まで身勝手な優しさや見返りを求めてくる優しさ、借りを作る優しさ。様々な“優しさ”を見てきた。
なかには優しさと呼べるのか怪しいものすらあった。

だがあなたはずっと、見返りも求めずただただ純粋に尽くしてくれていた。

それが日車にとってどれだけ大きなものだっただろうか。





「優しくしてるつもり、無かったな。」

日「ないのか?」

「うん。無意識でやってたのかなぁ」

日車は一瞬黙った。そしてふっと息を吐く。どこか力の抜たような、小さな笑い。

日「そうか」





あなたの瞳を見て、穏やかに言った。

日「こういうのも、いいな。」






裁判も、人間も、世界も。
どうしようもなく面倒なものばかり。
けれど、この体温があるなら。——

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