第3話

第3話「届かない笑顔、奪われていく希望」
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2026/07/05 03:00 更新
朝。

街にはどこか重い空気が流れていた。

レシピッピが次々と姿を消し、人気だった飲食店から笑顔が少しずつ失われていく。
ローズマリー
「またレシピッピが奪われたわ……。」

机の上には被害報告が積み重なっていた。

昨日だけで十件。

今日は朝からさらに五件。

異常な速さだった。

コメコメ
「コメェ……。」
場面は変わり、商店街。

一人の少女が静かに歩いている。

ピンクのワンピースに、薄茶のベスト。

紫色の瞳。

ブンドル団幹部・ファイトルー。

彼女はレシピッピを見つけると、まるで散歩の途中で花を摘むかのような自然な動作で捕獲していく。

ファイトルー
「今日もたくさんいるね。」

「みんな、ブンドル団に来てね。」

その声には敵意も怒りもない。

ただ、それが当たり前の日課であるかのようだった。
警報が鳴る。

ローズマリー
「みんな!」

「また出たわ!」

四人は現場へ急ぐ。

しかし――。

そこにいたのは、いつものように微笑むファイトルーだった。

ファイトルー
「あ、みんな。」

「来ると思ってたよ。」

その笑顔は、和実ゆいが友達に向けていた笑顔そのもの。

だからこそ、誰も最初の一歩を踏み出せない。

---

キュアスパイシー
「……ゆい。」

ダークプレシャス
「違うよ。」

「私はファイトルー。」

「……でも。」

少し首をかしげる。

「その呼び方も、なんだか懐かしいね。」

彼女は少しだけ笑った。

それは温かい笑顔。

しかし次の瞬間には、迷いなくレシピッピを回収していく。
キュアヤムヤム
「もうやめてよ!」

ダークプレシャス
「どうして?」

「ゴーダッツ様のためになるんだよ?」

その言い方は、以前ゆいが

「みんなで食べるとおいしいよ!」

と話していた時と、まったく同じ調子だった。

違うのは、その"信じているもの"だけ。
戦闘が始まる。

プリキュアたちは攻撃を繰り出す。

しかし、

拳が止まる。

蹴りも止まる。

目の前にいるのは敵。

それは理解している。

それでも、

その姿は大好きな仲間だった。

---

キュアフィナーレ
「攻撃しないと!」

キュアヤムヤム
「でも……!」

キュアスパイシー
「ゆいに当たる……!」

一瞬の迷い。

その隙をファイトルーは逃さない。

ダークプレシャス
「ありがとう。」

「みんなは優しいね。」

彼女は穏やかに微笑みながら、最後のレシピッピを回収する。
変身解除後。

秘密基地。

誰も口を開かなかった。

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らん
「もう……無理だよ。」

「ゆいぴょんを敵なんて思えない。」

涙が机に落ちる。

ここね
「助けたい。」

「でも、このままじゃ街のみんなも守れない……。」

あまね
「私もジェントルーだった。」

「だから分かる。」

「洗脳されているなら、きっと助けられる。」

そう言いながらも、拳は震えていた。

自分は救われた。

だが、ゆいを救う方法はまだ見つかっていない。
その夜。

ファイトルーはブンドル団のアジトで戦果を報告していた。

ファイトルー
「本日のレシピッピ回収、完了しました。」

ゴーダッツ
「よくやった。」

彼女は自然に笑う。

ファイトルー
「ありがとうございます!」

その笑顔は以前よりずっと柔らかい。

洗脳された直後のぎこちなさは消え、言葉遣いも和実ゆいだった頃とほとんど変わらなくなっていた。

ただ一つ違うのは、

その優しさが、今はブンドル団へ向けられていることだった。

---

部屋へ戻ったファイトルー。

窓から夜空を眺める。

ふと、小さくつぶやく。

ファイトルー
「ここねちゃん……。」

「らんちゃん……。」

「あまねちゃん……。」

「たくみ……。」

その名前が自然と口をつく。

しかし彼女はすぐに首を振り、微笑んだ。

ファイトルー
「ううん。」

「プリキュア。」

「次も絶対に負けないからね。」

その言葉に迷いはない。

彼女の心の中では、「和実ゆい」としての思い出は少しずつ遠ざかり、「ファイトルー」としての日々が当たり前になりつつあった。
一方、その頃。

ローズマリーは静かに仲間たちへ告げる。

ローズマリー
「このままじゃダメよ。」

「ゆいちゃんを救う方法を見つける前に、心までファイトルーになってしまう。」

その言葉に、誰も返事ができなかった。

彼女たちは今、「倒すべき敵」と「必ず助けたい仲間」が同じ存在であるという現実に苦しみながらも、諦めずに前へ進む決意を固めるのだった。
続く…

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