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第2話

" 鬼の花嫁 "
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2024/06/07 07:00

この村には 年に一度 誰かが 鬼の花嫁となり

この世を去らなければ ならない

という掟がある 。






そして 我が 家系は

代々 " 花嫁 " を務めてきた 。


花嫁と書き、 生贄と読むこともある 。







先祖代々 女性しか生まれてこなかった

この家に

我が 生まれてしまった 。







男が 花嫁になるなど

聞いたことがない 。







どうせ 鬼の食料に なるのだろうと

貧乏な暮らしを あたえられた 。




だが 苦しくは無かった 。

此方に 残された 父様 と

二人で 暮らす 。

農民の 少し下程の 暮らしだったけれど、

幸せだった 。







だが、 不幸というものは

当然 襲ってくる 。











……今朝 。

父様が 泣いて 我を 抱き締めてきた時、

全て理解した 。






ついに時が 来てしまったのだと 。





︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
… お綺麗ですよ 。
 … どうも 。


男なのに 化粧なんて いるのかとは

思ったものの 口を出す権利は無いので

黙っておく 。


︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
 この儀式の 正規の 着方です 。
お許し下さい … 、

… 、?



死装束 … 。

死ぬ前に これを着るのかよ …

死装束に

綿帽子も 被せられ

自分で着ているものの、 なんだか不気味である 。






















この儀式では

花嫁を 綺麗に着飾って

足に重りをつけ

鬼の住む世界と 此方の世界の出入口と

言われている 湖に おとす。




本当に 鬼の花嫁になるものもいれば

鬼の夜食となる 者もいるそうで 。




我は 夜食確定なのだが、。






















船で 湖の 真ん中に 漕いで行く 。


村の神よ 、どうかお納めください 。
へっ 、 精々 役に立ってくれよ 。


どん ッッ ゛


手枷足枷 目隠し と きたもんだ、


助かるわけが無い、


口も塞がれていて 息すら出来ない 。


人間として 見られてこなかった この18年間 。


それよりは、 死ぬことは辛くなかった 。





母様や 父様の 顔を思い浮かべながら

意識を失って行った 。

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