👑side
さっきのハニ……凄く可愛かったなぁ。
チャニヒョンが勢い余って殺そうとしてたから、必死に止めたけど。
僕達に喰種と言われたハニは、これからCCGとしてどうするんだろう?
いきなりやめる?だけどそうしたら、残りの4人がCCGから解放されることはない。
それはきっと、ハニが一番嫌な展開なはず。
……そういって、頭を下げるハニ。
あぁ……なんて可愛いんだろう。
あんなに頭の切れるハニを、普通は頼らない僕達に頭を下げてまでお願いするほどハニを追い詰めている人物。
もしかすると、ハニがこの前チャニヒョンに電話していた「GIANT」と今回の件は密接に関係があるのかもしれない。
………殺されたい?
……あの、ハニが?
………言われてみれば、僕はハニの実験に協力することはあっても、そもそも何のためにこんなことをしているのか考えたこともなかった。
ただ楽しいから、面白そうだから協力した。それだけだった。
………だけど、チャニヒョンの話を聞いてハニは赫眼になり瞳を赤と黒に染める。
こんな可愛いハニを今すぐに殺すのはどうしても惜しくて、ヒョンを宥めてからハニも宥めようとすると…………
……ハニは先程とは打って変わって、人間離れした目から静かに綺麗な涙をぽろぽろ溢していた。
いつもはあんなに余裕そうに見せているハニが、今初めて僕達の前で弱みを見せて泣いている。
………ハニはそう呟きながら、涙を流し続ける。
……ハニの「愛されたい」という感情は、もう完全に歪みきっている。
詳しくは僕にはよくわからないけど、きっと幼い頃の経験が関係して、歪んだ愛を相手に求め続けるんだ。
求めて、愛されなくて、死ねなくて。
それを繰り返すうちに、またどんどん歪む愛への価値観。
もうハニの愛への固執を止めることは誰にもできない。そして、殺されることでしか愛を感じることもできない。
……つまりハニは生きているだけで、本当は毎日劣等感や孤独感を感じている…んだと、思う。
なんで……かぁ。
本音を言えば、僕達はまだハニのこの踠き苦しむところを見ていたいから………だけど。
僕がそう言うと、ハニはため息をついた。
お前ら「には」…ね。
……ハニは手で涙を拭って、少し無言になったあと。
ハニが悲しそうに笑ってそう呟いたこの空間は、しばらく沈黙に包まれていた。
🐶side
………おかしい。
どうして、どうしてなの?
どんっ!!
……僕達がどれだけ攻撃しても、この喰種は反撃をしない。もはや、敵意すら向けてこない。
ただ涙を溢して、僕達を見つめながらされるがままに倒されているだけだ。
僕達の攻撃でどんどん血まみれになって行くこの美しい喰種は、見ていて痛々しい。
本当はこの喰種を殺すことが任務なはずなのに、抵抗してないなら尚更早く任務を終えられるはずなのに。
僕達は、ずっと違和感を感じてこの喰種に完全な殺意を向けることができないでいた。
ずきっ
……また、だ。
この喰種に疑問を抱く度に、頭がどんどん痛くなる。
それは僕だけではなくみんなも同じようで、いつの間にか僕達は攻撃をすることすら辛くなっていた。
……………何か………知っている気がするんだ。
美しい喰種は、僕達が苦しんでいる間にStraykidsのドアに寄りかかって、僕達から攻撃を受けたところを押さえながら涙を流して苦しんでいる。
普通はどちらかが勝って終わるはずなのに、僕達は今全員原因がわからないのにまるで満身創痍状態に陥っているんだ。
頭が、痛い。
割れるように痛くて、考えるうちに動くことですらしんどくなってくる。
………僕達は、CCG失格だ。
なぜなら、
僕達は今、この喰種を殺す理由も意味も、何もわからないから。
……僕はもう全てがわからなくなって、喰種にそう問いかけた。
……でも、返ってきた言葉は、期待していた答えではなかった。
笑顔なのにどこか悲しくて、泣いているのにどこか目の奥が暗くて。
……今、理由はわからないけどこの喰種を殺そうと微塵も思えない僕達にとって、その言葉は余計僕達の頭を混乱させるだけだった。
………だから、僕はいてもたってもいられなくなってしまった。
…………僕は気付けば、身体に何かが取り憑いたかのようにCCGに後戻りをするために走っていた。
こんな場から早く逃げ出したくて、喰種を殺したくなくて、でもそんなことを考える自分がよくわからなくなって、何も考えたくなくなって。
僕は逃避をするために、その場から逃げてしまった。























編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!