夜風が心地よく、通りに立ち並ぶ屋台の明かりがゆらゆら揺れていた。
浴衣姿の人々が笑いながら歩く中、私は樹くんと一緒に歩いていた。
浴衣の帯を直す手元が少し不慣れで、心臓が少し跳ねる。
樹くんが少し照れくさそうに笑いながら、ふと私の顔を覗き込む。
慌てて顔をそらす。
でも、胸の奥は熱くなっていた。
“樹くんに褒められた”――それだけで、一日中胸が浮きそうだ。
樹くんは少し強引に視線を合わせて、にやっと笑う。
心臓が止まりそうになり、思わず手を握りしめてしまった。
言葉に詰まる私に、樹くんは何も言わず、にやりと笑う。
その笑顔に、ドキドキが止まらない。
屋台の明かりが二人の影を長く伸ばす。
樹くんが提案すると、私は頷いた。
屋台に着くと、樹くんは何気なく私の後ろに立ち、金魚すくいの網を手伝ってくれる。
その手が私の手に重なる。
熱い……と思った瞬間、樹くんが小さく笑う。
少し照れながら聞くと、樹くんは軽く手を離したけど、指先がほんの少しだけ触れたままだった。
笑いながら答える私に、樹くんはじっと目を見つめる。
その視線に、胸がぎゅっと締め付けられる。
金魚が水面を跳ねると、樹くんが嬉しそうに手を叩いた。
小さな成功で、二人の距離が少し近くなる気がした。
歩きながら、花火大会の時間が近づく。
樹くんが手を差し出して、私はその手を握った。
握られた手は、ほんのり温かくて、でも緊張で指先が震える。
小さく答えながらも、心臓がドキドキ鳴っていた。
河原に着くと、周りはカップルや友達でいっぱい。
樹くんと並んで座ると、花火が夜空に大きく咲いた。
樹くんの腕が、自然と私の肩に触れる。
軽く肩を寄せられるだけで、胸がぎゅっとなる。
小さな声で呼ぶと、彼がこっちを向いた。
樹くんは少し驚いた顔をして、でもすぐに笑う。
そう言いながらも、体が自然と樹くんの方に寄っていく。
花火が次々に打ち上がるたびに、光と音が夜空に弾ける。
樹くんが小さな声で言うと、思わず頬を手で覆ってしまった。
でも心臓は止まらず、耳の奥まで熱くなる。
樹くんは、ふっと笑って空を見上げる。
その声は小さく、でも確かに届いた。
夜空に咲く花火を見上げながら、私は思う。
“やっぱり、この人の隣にいるのが好きなんだ”って。
でも、まだ言葉にできない。
心の中で大切にしまったまま、二人で花火を見つめる。
桜の季節から始まった日常が、こうして夏の夜に彩られる。
この瞬間のドキドキを、誰にも知られたくない――
そう思いながら、樹くんと肩を寄せ合った。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!