第4話

🌸夏祭りと浴衣と、秘密の距離
31
2025/10/14 14:06 更新
夜風が心地よく、通りに立ち並ぶ屋台の明かりがゆらゆら揺れていた。
浴衣姿の人々が笑いながら歩く中、私は樹くんと一緒に歩いていた。
浴衣の帯を直す手元が少し不慣れで、心臓が少し跳ねる。
田中樹
田中樹
お前、それ浴衣似合ってるな。
樹くんが少し照れくさそうに笑いながら、ふと私の顔を覗き込む。
(なまえ)
あなた
え……そ、そんなことないし!
慌てて顔をそらす。
でも、胸の奥は熱くなっていた。
“樹くんに褒められた”――それだけで、一日中胸が浮きそうだ。
田中樹
田中樹
いや、マジだって。
樹くんは少し強引に視線を合わせて、にやっと笑う。
田中樹
田中樹
それに、いつもと違う感じでいいな。
(なまえ)
あなた
いつもと違う感じって……つまり?
田中樹
田中樹
……かわいいってこと。





心臓が止まりそうになり、思わず手を握りしめてしまった。




(なまえ)
あなた
ちょっ………
言葉に詰まる私に、樹くんは何も言わず、にやりと笑う。
その笑顔に、ドキドキが止まらない。






屋台の明かりが二人の影を長く伸ばす。
田中樹
田中樹
じゃあ、金魚すくいでも行くか?
樹くんが提案すると、私は頷いた。
(なまえ)
あなた
え、いいの?
田中樹
田中樹
もちろん。お前と一緒ならな。
屋台に着くと、樹くんは何気なく私の後ろに立ち、金魚すくいの網を手伝ってくれる。
田中樹
田中樹
こうやるんだ。力を抜け、力を
その手が私の手に重なる。
熱い……と思った瞬間、樹くんが小さく笑う。
(なまえ)
あなた
……あ、あの、手、離してもいいの?
少し照れながら聞くと、樹くんは軽く手を離したけど、指先がほんの少しだけ触れたままだった。
田中樹
田中樹
……別に、いいけど。
笑いながら答える私に、樹くんはじっと目を見つめる。
その視線に、胸がぎゅっと締め付けられる。
(なまえ)
あなた
取れた!
金魚が水面を跳ねると、樹くんが嬉しそうに手を叩いた。
田中樹
田中樹
すげぇ、ちゃんと取れたじゃん。
(なまえ)
あなた
やった……!
小さな成功で、二人の距離が少し近くなる気がした。







歩きながら、花火大会の時間が近づく。
田中樹
田中樹
せっかくだし、河原で見ようぜ。
樹くんが手を差し出して、私はその手を握った。
(なまえ)
あなた
えっ……手?
田中樹
田中樹
そう。ほら、花火、一緒に見たいだろ?




握られた手は、ほんのり温かくて、でも緊張で指先が震える。



(なまえ)
あなた
う、うん……
小さく答えながらも、心臓がドキドキ鳴っていた。








河原に着くと、周りはカップルや友達でいっぱい。
樹くんと並んで座ると、花火が夜空に大きく咲いた。
(なまえ)
あなた
うわ……綺麗。
田中樹
田中樹
な、だろ?




樹くんの腕が、自然と私の肩に触れる。
軽く肩を寄せられるだけで、胸がぎゅっとなる。



(なまえ)
あなた
……ねえ、樹くん。



小さな声で呼ぶと、彼がこっちを向いた。
田中樹
田中樹
なに?
(なまえ)
あなた
……なんか、いつもより近くない?
樹くんは少し驚いた顔をして、でもすぐに笑う。
田中樹
田中樹
そうか? 気のせいじゃね?
(なまえ)
あなた
う、うん……気のせいかもね。
そう言いながらも、体が自然と樹くんの方に寄っていく。


花火が次々に打ち上がるたびに、光と音が夜空に弾ける。
田中樹
田中樹
……お前、顔赤いぞ。



樹くんが小さな声で言うと、思わず頬を手で覆ってしまった。
(なまえ)
あなた
なっ……そんなことないし!


でも心臓は止まらず、耳の奥まで熱くなる。

田中樹
田中樹
……ほんとに?
(なまえ)
あなた
……ほんと!
樹くんは、ふっと笑って空を見上げる。
田中樹
田中樹
まあ、俺もドキドキしてるけどな。
(なまえ)
あなた
え?
田中樹
田中樹
お前と一緒にいるとさ、なんか落ち着かないっていうか……
その声は小さく、でも確かに届いた。

夜空に咲く花火を見上げながら、私は思う。
“やっぱり、この人の隣にいるのが好きなんだ”って。

でも、まだ言葉にできない。
心の中で大切にしまったまま、二人で花火を見つめる。



桜の季節から始まった日常が、こうして夏の夜に彩られる。
この瞬間のドキドキを、誰にも知られたくない――
そう思いながら、樹くんと肩を寄せ合った。

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