放課後。今日は部活もない。
蓮「あ!あなたの下の名前!一緒に帰ろ!」
「あ、蓮くん。いいよ。」
?「……あなたの下の名前!!!」
突然、背後から強く名前を呼ばれる。
振り返る間もなく、腕をぐっと引かれた。
「えっ、ちょ、永玖──」
戸惑いながらも、永玖の手に引かれて屋上へ駆け上がる。
人気のない場所でようやく止まった永玖は、息を乱したまま振り向いた。
永玖「……なんで、あいつと帰んの?」
「え、?」
永玖「なんで俺と玲がいるのに、他の男子と帰るんだよ」
「それは……玄関で声かけられたから……」
永玖「だからって、ホイホイついてくとか意味わかんねーし。」
「っ……そんなつもりじゃ……」
永玖「最近、あいつと仲良すぎ。俺も玲も……お前のこと見てんのに。気づいてないわけ?」
その言葉に、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
永玖の視線は、まっすぐ私を射抜いていた。
「……ごめん。そんなつもりじゃ……」
思わず俯いたその瞬間、
?「──永玖」
屋上の扉が開く音。
静かな低音の声が響いた。
玲「その辺にしときな」
永玖「……なんだよ、玲」
玲「言い方、キツすぎる。あなたの下の名前が悪いわけじゃない」
玲は私のそばに歩いてきて、
静かに、でも確かに永玖の前に立つ。
永玖「なんだよ、お前だって男と喋ってるこいつにヤキモチ妬いてたじゃねーかよ。」
玲「そりゃ妬くよ。好きだもん。ずっと。」
永玖「…。」
「…れ、い今なんて?」
玲「ん?好きって言ったけどダメだった?」
「玲が誰のこと好きって?」
玲「え、そんなんあなたの下の名前しかいなくない?」
永玖「お前、何サラッと気持ち伝えてんだよ。」
玲「あぁ、ごめん。」
永玖「ふざけんなよ……お前、マジで言ってんの?」
玲「うん、本気。永玖が黙ってるから、代わりに言っただけ。」
「え、ちょ、待って……なんで、なんで急に……」
頭が追いつかない。
さっきまで、ただ一緒に帰ろうとしてただけなのに、
今は永玖と玲、両方から“想い”をぶつけられてる。
永玖「……もう、言っちゃったなら仕方ねぇな」
ぽつりと永玖がつぶやいたかと思えば、
こっちを真っ直ぐに見つめて言った。
永玖「俺だって、お前のこと好きだよ。」
「──えっ?」
永玖「誰と仲良くしてもいい。誰と笑ってても仕方ねぇって思ってたけど…今日のは無理だった。見てらんなかった。」
玲「……」
永玖「俺、ずっとお前のこと、好きだった」
玲は一歩引いた。
でも、顔は笑っていた。どこか切なそうに。
玲「……言えたじゃん、永玖。やっと」
「え、え、ちょっと待って。2人とも、なんでそんな普通に──」
永玖「普通じゃねぇよ、マジで必死だったよ」
玲「でも、今日言わなきゃ……たぶん永玖、後悔すると思ってた」
永玖「……わかってんなら、黙っとけよ」
玲「無理。オレだって、好きなんだから」
屋上に響くのは、風の音と、心臓の音だけ。
私は何も言えないまま、
ただ、二人の“本気の気持ち”に挟まれていた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!