放課後の教室。
永玖はいつも通り、
窓際の席でイヤホンを片耳に差して、
ノートに何かを書いていた。
ずっと避けられてる気がして。
話しかけるのも怖かったけど、
それでも、理由を知りたくて。
(もう、聞いちゃおう……)
私は深呼吸して、永玖の横まで行く。
「……ねえ、永玖。ちょっと、いい?」
永玖はゆっくり顔を上げた。
でも、その目はなんとなく冷たくて。
前みたいな優しい感じじゃなくて、
少しだけよそよそしい。
永玖「……何。」
その声に、一瞬ひるむ。
「最近……なんか、避けてる?」
「もし、私、何かしたなら…ごめん。」
永玖はちょっとだけ黙ったあと、
ため息をついて、ノートを閉じた。
「……別に。避けてねぇし。」
「でも──」
「お前が気にするほどのことじゃねぇから。」
永玖の言葉は、どこか“壁”みたいで。
それ以上踏み込んだら、何かが壊れそうで。
私はうまく言葉を継げなくなった。
「じゃあ、帰るわ。」
永玖はカバンを手にして、立ち上がる。
すれ違うとき、一瞬だけ私の目を見た気がしたけど、
その表情には、何も映っていなかった。
(……全然、わかんないよ。永玖のこと。)
ぽつんと残された教室に、
私の心の音だけが響いていた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!