いよいよ授業参観,当日。
学校に沢山の大人が集まる日だ。
結構早い時間から,お父さんやお母さんがどんどんやって来て,教室の後ろに立つようになる。
六年生にもなると,高尾のところみたいに仕事で来られないお家も結構あるし,生徒の方も,低学年の頃みたいに大騒ぎしたりはしない。
でもやっぱり,普段とは違う授業の雰囲気にワクワクして,誰の親がどこにいるのか,ついつい答え合わせしたくなったりもする。
私,綾瀬花日も,結衣ちゃんやまりんちゃんと一緒に,休み時間を保護者ウォッチングにあてていた。
結衣ちゃんが,教室の後ろを見ながら小声で言った。
ねー,と同意したまりんちゃんが,クスクス笑いながら私達にも目配せする。
例えば,おしゃれなスーツとドレスでキメたお父さんとお母さん。一眼レフのデジカメで連写,さらにビデオで動画撮影しているふたりは,どう見ても心愛ちゃんの親だ。実際,心愛ちゃんも女優みたいなポーズをキメて,お父さん達に撮影されまくっている。
後は,銀縁メガネのお父さんとお母さん。「挙手」「発言」のボードを出して,無言で息子を応援している。あれも間違いなく委員長の親だと思う。
私が頷くと,「・・・・・・だねぇ」と結衣ちゃんも苦笑した。
その時,またひとり誰かのお母さんが教室に入って来た。
緩くウェーブのかかった髪の毛を後ろで束ねている,優しい感じの女の人だ。
私の言葉に,結衣ちゃん反応した。
するとお母さんは,こちらを見ながら小さく手を振った。
ぶっきらぼうに応じているのは,桧山一翔。結衣ちゃんの彼氏だ。
と,いうことは・・・・・・。
トモヤとエイコーが,羨ましそうな声を上げている。
桧山のお母さんは結衣ちゃんにも気付いて,私達の近くまでやって来た。
声をかけられて,結衣ちゃんは緊張気味に,ペコリと頭を下げた。
桧山のお母さんは,優しい笑顔を結衣ちゃんに向けた。
おお・・・・・・結衣ちゃん,嬉しそうだ。
彼氏のお母さんといい感じって,なんだかすごい!
良かったね,結衣ちゃん。


















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。