放課後。私,蒼井結衣が塾の教室に着いた時は,もう空気が違っていた。
席に着いた私を,少し離れたところで数人固まっていた女の子達が,遠巻きに見ている。本人達は私にきこえないように,小さい声で話しているつもりなんだけれど,こういうのって,よく聞こえちゃうんだよね・・・・・・。
すごーい。なんて,ひそひそ声で言い合っている。
マジでー。って,興奮気味の相槌が続く。
──本当なわけないじゃない。それじゃあ,魔女だよ・・・・・・。
私も心の中で呟いてしまう。
そんなの違うって言いたいけど,お喋りしている女子は別の小学校だし,塾の子,まだよく知らないし・・・・・・。
げんなりして,ため息をついてたら,
視線をあげると,目の前に稲葉くんがいた。背が高いのにわざわざ体を折り曲げて,顔を覗き込んでくる。
──やっぱり,近っ・・・・・・!
私が硬直していたら,稲葉くんは空いていた前の席の椅子を引いて,私の机に肘を置いた。にっこり笑って頬杖を突いて,今度は私の顔を下から伺うようにした。
いきなりそんなことを言われて,びっくりしてしまう。
稲葉くんも,エイコーが配った「カレカノ新聞」号外のこと,知ってるんだよね?
それなのに,こんなに自然に話してくれるのは,どうしてだろう。
え?え?話の展開についていけない。洋服?お店?
またまた,にっこり。
その直後,私にはものすごく聞き慣れた声が聞こえてきた。
と,お姉ちゃんと軽めの口論を始めた時・・・・・・
その時,教室の外から,別のクラスの女の子が声をかけてきた。
稲葉くんは笑顔のまま,そちらを見た。そして椅子から立ち上がると,
私の横を通り過ぎる時に,小さい声でそう言ったが,お姉ちゃんには聞こえていたみたいで,ウザったそうにしながら稲葉くんを追い払っていた。
稲葉くんはそう言いながら,教室を後にした。
・・・・・・やっぱり,稲葉くんは謎だ。
今のは,私を慰めてくれようとしたのかな?でもなんで,急に土日に出掛ける話になったんだろう・・・・・・。
お姉ちゃんの言葉に呆気にとられていたら,私も声をかけられた。
三上さんだ。授業の後に何度か,問題の解き方を話したことのある女の子。その後ろには,三上さんとよく一緒にいる女の子達が立っている。
三上さんは,真剣な表情で私に告げた。
ここから先は,私が知らなかったこと。
用事を済ませて教室に戻ってきた稲葉くんは,私の姿が見えなくなっていることに気がついて,あたりを見回した。
その様子に気付いた友人のメガネくんが,稲葉くんに声をかける。
稲葉くんは,いきなり難しい顔をした。
そのまま教室を出て行こうとする背中へ,メガネくんが不思議そうに聞く。
すると稲葉くんは軽く振り返って,白い歯を見せて笑った。
お姉ちゃんはそう言いながら,持参していた小説を片手に先程同様,ウザったそうにしながら稲葉くんを追い払った。今度はジェスチャー付きで












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。