馬車に乗って移動しながら、ルカが連れて行ってくれたのは美術館だった。
二人でお行儀よく展示物を見て回る。
この後、食事も予約してあると言い、ルカのいうとおり「デートらしいデート」だなぁというのが正直な感想だ。年頃の令息令嬢は下町を走り回ったり、アイスクリームを買い食いしたりしない。
気取った店でエスコートしてくれるよりも、下町にいた時の方が生き生きしているように見えた。
珍しくルカが照れている。
社交界では派手に遊んでいるチャラ男が、実は一人で下町をぶらぶらするのが好きな庶民派だとバレて恥ずかしいのかもしれない。
とんでもないことを口にしてしまった気がして焦った。
このネタでからかわれ続けるかと思って必死になって否定してしまったが、ルカは「ありがとね」とソフィーの頭に軽く手を乗せただけで話を収めてしまった。
ちらちらとルカの顔色を窺っていると、美術館のエントランスホールで声を掛けられた。
声を掛けてきたのは、いつぞやのボート遊びの時にいた令嬢だ。
彼女は、ルカの後ろに隠れているソフィーにちらりと視線を投げかけた。
あまり悪びれていない口調で、彼女はルカに上目遣いをする。
どうやら彼女はルカの後ろに隠れているのがソフィーだと気づいていないらしい。
ルカは面白がるようにソフィーを振り返った。
ああっ、何で言っちゃうの⁉
黙っているわけにもいかず、ソフィーはおずおずと顔を出した。
彼女はあんぐりと口を開けてしまった。
どうしてこんなに大変身したかと言えば、最強の四人組にピカピカに磨きたてられたからで――なぜだかルカの方が得意気になってソフィーの腰を抱いた。
堂々と惚気てその場を立ち去る。
ソフィーはショックを受けている令嬢を何度も振り返ってしまった。
そして、真面目な表情でソフィーを見つめた。
いつものように調子の良い誉め言葉には聞こえなかった。
とても真剣にソフィーを励ましてくれているのが伝わり、胸がじんと熱くなる。
げらげら笑うルカに、冗談を言い合えるようになるほど一緒に過ごしてきたのだなぁと思う。
無理矢理決められた相手だからというだけでなく、もっとルカのことを知りたいし、側にいられるように努力したい。そんなふうに自然に思えた。
デートを楽しみ、西日が差す頃――アドルナート家の家紋付きの馬車が二人の前に止まる。
ルカの言葉にソフィーは頷く。
そして、少しだけ勇気を出してみた。
けれど、小さな声は御者が扉を開ける音でかき消されてしまう。
ルカが馬車の中に向かって手を差し伸べると、白い手袋をはめた手が重ねられた。
馬車に乗っていたのは淡いピンク色のドレスを着た美少女だ。
彼女は当然のようにルカの隣に収まり、ルカも彼女の腰を抱き寄せた。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!