第22話

俺がきみにできること
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2024/08/18 11:00 更新
ルカ
ルカ
思えば、ちゃんとデートらしいデートをしてこなかったなと思ってさ
馬車に乗って移動しながら、ルカが連れて行ってくれたのは美術館だった。
ソフィー
ソフィー
下町に連れて行ってもらいましたよ?
ルカ
ルカ
そうじゃなくって、もっとちゃんとしたデートだよ
二人でお行儀よく展示物を見て回る。
この後、食事も予約してあると言い、ルカのいうとおり「デートらしいデート」だなぁというのが正直な感想だ。年頃の令息令嬢は下町を走り回ったり、アイスクリームを買い食いしたりしない。
ソフィー
ソフィー
わたしはああいうのも楽しかったですけど……
ルカ
ルカ
ええっ⁉
ソフィー
ソフィー
どうしてそんなに驚くんですか
ルカ
ルカ
いや~……ソフィーの驚く顔が見たくて下町に連れ出したんだけど、デートとしては安上がりだったかな、と思うし
ソフィー
ソフィー
でも、ルカ様は下町がお好きなんでしょう?
気取った店でエスコートしてくれるよりも、下町にいた時の方が生き生きしているように見えた。
ソフィー
ソフィー
好きな人の好きなものを知れたら嬉しいです
ルカ
ルカ
え。そ、そっか……。ありがと
ソフィー
ソフィー
珍しくルカが照れている。

社交界では派手に遊んでいるチャラ男が、実は一人で下町をぶらぶらするのが好きな庶民派だとバレて恥ずかしいのかもしれない。
ソフィー
ソフィー
(ん? わたし、今、好きな人・・・・って……)
とんでもないことを口にしてしまった気がして焦った。
ソフィー
ソフィー
ち、ちがっ! 人として好きって意味ですよ⁉
ルカ
ルカ
知らなかったな~、ソフィーがいつの間にか俺の事を好きになっていたなんて
ソフィー
ソフィー
誤解です! 前ほど嫌いじゃないっていうか、友情みたいなものが芽生えているっていうかっ
このネタでからかわれ続けるかと思って必死になって否定してしまったが、ルカは「ありがとね」とソフィーの頭に軽く手を乗せただけで話を収めてしまった。
ソフィー
ソフィー
(好き、なんて言われ慣れてるから気にしてないのかしら……?)
 ちらちらとルカの顔色を窺っていると、美術館のエントランスホールで声を掛けられた。
令嬢
ルカ様? お会いできるなんて奇遇ですわ
ルカ
ルカ
ん? やあ、シンシアじゃないか
ソフィー
ソフィー
(ひえっ)
声を掛けてきたのは、いつぞやのボート遊びの時にいた令嬢だ。
彼女は、ルカの後ろに隠れているソフィーにちらりと視線を投げかけた。
令嬢
やだぁ。わたくしったら、デートの邪魔をしてしまいました?
あまり悪びれていない口調で、彼女はルカに上目遣いをする。
令嬢
最近遊んで下さらなくって寂しいわ。
今度はわたくしともデートしてくださいませ
ルカ
ルカ
残念だけど、俺はもう婚約者がいる身だからね
令嬢
ふふっ。婚約者ってあの地味なソフィーさんでしょう? ソフィーさんに隠れて別の女性とデートしていらっしゃるくせに、何をおっしゃっているのやら
ソフィー
ソフィー
(へ?)
どうやら彼女はルカの後ろに隠れているのがソフィーだと気づいていないらしい。
ルカは面白がるようにソフィーを振り返った。
ルカ
ルカ
だってさ、ソフィー
ああっ、何で言っちゃうの⁉
黙っているわけにもいかず、ソフィーはおずおずと顔を出した。
ソフィー
ソフィー
あ、あの、こんにちは……。
ソフィー・サヴェッリです……
令嬢
は⁉
彼女はあんぐりと口を開けてしまった。
令嬢
え? ソ、ソフィーさん……?
ルカ
ルカ
ソフィーだよ。わからなかった?
令嬢
う、うそ。あの地味な子がどうして……
どうしてこんなに大変身したかと言えば、最強の四人組にピカピカに磨きたてられたからで――なぜだかルカの方が得意気になってソフィーの腰を抱いた。
ルカ
ルカ
どう? 可愛いでしょ、俺の婚約者は。
彼女に夢中になっちゃったから遊びの恋はもういいかな
堂々と惚気てその場を立ち去る。
ソフィーはショックを受けている令嬢を何度も振り返ってしまった。
ソフィー
ソフィー
い、いいんですか? あんなこと言って……
ルカ
ルカ
うん。ソフィーが軽んじられるのは嫌だって思ったからね
そして、真面目な表情でソフィーを見つめた。
ルカ
ルカ
きみは可愛いよ、ソフィー
ソフィー
ソフィー
ル、ルカ様……
ルカ
ルカ
自分に自信がないみたいだけど、きみはすごく可愛くて、一緒にいて楽しい女の子だよ。誰かに気後れする必要なんてない
いつものように調子の良い誉め言葉には聞こえなかった。
とても真剣にソフィーを励ましてくれているのが伝わり、胸がじんと熱くなる。
ソフィー
ソフィー
わたしが変われたのなら、それはルカ様のおかげですよ
ルカ
ルカ
そう?
ソフィー
ソフィー
なんというか、たくましくなれたような気がします
ルカ
ルカ
あははっ、その意気だよ。
図太くないと貴族社会は生きていけないもんね
げらげら笑うルカに、冗談を言い合えるようになるほど一緒に過ごしてきたのだなぁと思う。
ソフィー
ソフィー
(ルカ様にふさわしい人になりたいな)
無理矢理決められた相手だからというだけでなく、もっとルカのことを知りたいし、側にいられるように努力したい。そんなふうに自然に思えた。



デートを楽しみ、西日が差す頃――アドルナート家の家紋付きの馬車が二人の前に止まる。
ソフィー
ソフィー
(もう帰る時間……)
ルカ
ルカ
楽しかったね
ルカの言葉にソフィーは頷く。
そして、少しだけ勇気を出してみた。
ソフィー
ソフィー
……また一緒に、出かけてもらえますか……?
けれど、小さな声は御者が扉を開ける音でかき消されてしまう。

ルカが馬車の中に向かって手を差し伸べると、白い手袋をはめた手が重ねられた。
ソフィー
ソフィー
え……?
馬車に乗っていたのは淡いピンク色のドレスを着た美少女だ。
彼女は当然のようにルカの隣に収まり、ルカも彼女の腰を抱き寄せた。

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