フブキは目の前の少女をまじまじと見つめた。
小柄な体格。
三度笠で顔の上半分は影になっているが、その声色には妙な落ち着きと威圧感がある。
見た目だけなら、祭りに紛れていても不思議ではない旅人だ。
だが、その場にいる全員が直感していた。
――ただ者ではない。
フブキが問いかけると、少女は少し首を傾けた。
静かな声だった。
だが、質問というより確認のような響き。
唐突な問いに、フブキは眉をひそめる。
代わりにミオが口を開いた。
少し考えるように続ける。
少女は、しばらく黙っていた。
短く呟く。
その声には、どこか諦めにも似た響きが混ざっていた。
まつりが首を傾げる。
少女は小さく息を吐いた。
ころねが目を細める。
少女は答えない。
ただ静かに、祭りの人波の外へ歩き出した。
町外れ。
祭りの喧騒は遠くなり、山の麓に近い静かな場所。
虫の声と、風に揺れる木々の音だけが聞こえる。
少女は立ち止まり、振り返った。
フブキたちは自然と距離を取って並ぶ。
緊張が漂う。
少女は空を見上げた。
夕暮れの空を眺め、目を細める。
フブキの表情が変わる。
少女は淡々と頷いた。
そして、ゆっくりと言った。
笠の影の奥で、紅い目が光る。
当然だ。
伝説上の存在。
それが目の前の少女だと言われて信じられるわけがない。
少女――あやめは、わずかに肩をすくめた。
そう言うと三度笠に手をかけ、持ち上げる。
夕暮れの光が、その顔を照らした。
そしてその額には
ーー二本の角。
目の前の少女は、人間ではない。
その事実が突きつけられる。
あやめの左右に、青と赤の炎が灯る。
二つの鬼火が、意思を持つように揺れる。
ミオが息を呑んだ。
まつりが視線を落とす。
あやめの腰。
伝説の妖刀。
鬼が振るう二振り。
紛れもない本物。
妖の王。
本来なら、その名は災害と同義。
しかし――
フブキはしばらく黙ってから言った。
あやめは目を伏せた。
あやめはフブキを見た。
フブキは首を傾げた。
あやめの瞳がわずかに動く。
フブキはますます困惑する。
その瞬間、あやめの表情が変わった。
フブキが首を傾げる。
あやめは静かに言った。
誰も意味を理解できない。
だが、あやめは続けた。
フブキの背筋に冷たいものが走る。
あやめはゆっくりと空を見上げた。
霊脈、ヤマト全土を流れる霊力の大河。
結界の綻び。
そして、妖たち。
静かな声。
しかし重い。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。