柱に昇ったという知らせは、
蝶屋敷に、静かな波紋のように広がった。
母を失ってから一年。
鬼殺隊に入ってから、半年。
十五歳で柱 ____
それは、誇るべき快挙であり、
同時に、早すぎる別れでもあった。
朝の蝶屋敷は、いつもと変わらない。
薬草の香り
木漏れ日
それなのに、今日はすべてが、少しだけ遠く感じた。
私は、一人ずつ声をかけて回る。
縁側で、刀を磨いていた少女が顔を上げる。
そう彼女は短く答えた。
だが、私が蝶屋敷に引き取っていただいた
当初よりもほんの少しだけ柔らかい。
カナヲちゃんはしばらく黙っていたけれど、
やがて、そっと頷いた。
次に、きよちゃん。
すみちゃん、なほちゃんも、
それぞれに寂しそうに笑ってくれた。
その言葉一つ一つが、胸に沁みる。
私は、最後にあの人の前に立った。
胡蝶しのぶ。
一年間、ここで生き直すことを教えてくれた人。
私は深く、深く頭を下げる。
言葉は、それだけ。
しのぶ様は、少しだけ目を細めて、
いつもの微笑みを浮かべた。
けれど、その瞳の奥に、
ほんのわずかな寂しさが滲んでいるのを、
私は見逃さなかった。
そう答えると、彼女は小さく息をついた。
その一言に、胸が締め付けられる。
しのぶ様は、背筋を伸ばし、
柱としての私を、真っ直ぐに見据えた。
私は、紅赤の蝶の髪飾りにそっと触れる。
それは約束ではなく、誓いだった。
屋敷を出る直前、
振り返ると、蝶屋敷の少女たちが、並んで立っていた。
カナヲちゃんは無言で、
きよちゃん、すみちゃん、なほちゃんは、
小さく手を振っていた。
しのぶ様も、同じように小さく手を振っていた。
その顔は、私が蝶屋敷に引き取って
いただいた当初と同じ、優しい笑顔だった。
私は、深く一礼をする。
ここは、
失った心を、もう一度結び直した場所。
そして私は、
柱として、新しい屋敷へ向かって歩き出した。
その背に、 蝶たちの想いを背負って。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。