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第8話

人を守る者として
38
2026/01/07 08:20 更新








柱に昇ったという知らせは、
蝶屋敷に、静かな波紋のように広がった。





母を失ってから一年。



鬼殺隊に入ってから、半年。




十五歳で柱 ____




それは、誇るべき快挙であり、

同時に、早すぎる別れでもあった。








朝の蝶屋敷は、いつもと変わらない。



薬草の香り


木漏れ日




それなのに、今日はすべてが、少しだけ遠く感じた。





私は、一人ずつ声をかけて回る。





あなた
カナヲちゃん



縁側で、刀を磨いていた少女が顔を上げる。



栗花落 カナヲ
……あなた



そう彼女は短く答えた。



だが、私が蝶屋敷に引き取っていただいた
当初よりもほんの少しだけ柔らかい。





あなた
一緒に稽古してくれて、ありがとう







カナヲちゃんはしばらく黙っていたけれど、

やがて、そっと頷いた。




次に、きよちゃん。



寺内 きよ
あなたさん……行っちゃうんですね



あなた
うん。でも、また会えるよ



すみちゃん、なほちゃんも、
それぞれに寂しそうに笑ってくれた。



きよ、すみ、なほ
あなたさん、今までありがとうございました



その言葉一つ一つが、胸に沁みる。





私は、最後にあの人の前に立った。








胡蝶しのぶ。



一年間、ここで生き直すことを教えてくれた人。



私は深く、深く頭を下げる。





あなた
一年間、大変お世話になりました


言葉は、それだけ。



しのぶ様は、少しだけ目を細めて、
いつもの微笑みを浮かべた。





けれど、その瞳の奥に、 
ほんのわずかな寂しさが滲んでいるのを、
私は見逃さなかった。




胡蝶 しのぶ
立派になりましたね、あなたさん



あなた
しのぶ様のおかげです


そう答えると、彼女は小さく息をついた。





胡蝶 しのぶ
……寂しくなります



その一言に、胸が締め付けられる。



胡蝶 しのぶ
でも



しのぶ様は、背筋を伸ばし、 
柱としての私を、真っ直ぐに見据えた。





胡蝶 しのぶ
あなたが守る未来を、私は信じています



私は、紅赤の蝶の髪飾りにそっと触れる。





あなた
......必ず、生きて帰ってきます


それは約束ではなく、誓いだった。








屋敷を出る直前、

振り返ると、蝶屋敷の少女たちが、並んで立っていた。



カナヲちゃんは無言で、

きよちゃん、すみちゃん、なほちゃんは、
小さく手を振っていた。


しのぶ様も、同じように小さく手を振っていた。



その顔は、私が蝶屋敷に引き取って
いただいた当初と同じ、優しい笑顔だった。




私は、深く一礼をする。





ここは、

失った心を、もう一度結び直した場所。





そして私は、

柱として、新しい屋敷へ向かって歩き出した。







その背に、 蝶たちの想いを背負って。






作者
柱へと就任したあなたさんは、自分の屋敷を与えられ、蝶屋敷を出ました







作者
展開は早い方がいいんですよ…😏💓


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