取り乱す私を、医者が抑えた。
警察官は、部下に持ってこさせた、写真と日記を私に見せた。日記の字は、確かに、翔君のものだった。
私は絶句した。
だから、部屋を今まで見せなかったの…?
だから、大学まで、私に合わせようとしてきたの…?
思い当たる過去が溢れかえってきて、私は、その過去に押し潰されそうになった。
警察官が、初めて怒鳴った。
私は一瞬ひるみ、すくんでしまった。
…沙也加は、私のために…?
私の、ために、隠してた…?
苦しかった…?辛かった…?
私は何ひとつ、沙也加のことを、知らなかった…。
警察官が渡してきたものは、チョコレートだった。しかも、紫色の花の形をした、すみれのチョコレートだった。そして、ラッピングの中には、小さな手紙があった。
「あなたへ
あなたに会えて、本当に良かった!
これから、どんな事があっても、ずっと一緒に、乗り越えて、幸せになろうね!
沙也加より」
私の目からは、久しぶりに、涙が溢れ出ていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!