翔平side
看護師さん「お連れ様はここでお待ちください。」
勢いのまま着いていこうとする俺は、
手術室の前で看護師さんに止められる。
辺りは先程までの騒がしさとは裏腹に、
なんの音もない、ただただ静寂だった。
歩く度にコツンコツンと自分の足音が聞こえる。
俺は近くに置いてあった椅子に腰掛けた。
重い腰を思い切り椅子に預ける。
徐にスマホを開いてみるも、
それからの樹からのメールはきていない。
鼓動の勢いが増す。
俺の額に浮かぶ大粒の冷や汗、
それと、自然と荒くなる呼吸。
この静かな空間が、
俺の不安をふつふつと大きく膨れあがらせる。
『いつき、今どこ?
まだ病院着きそうにない?
俺、はやく樹に会いた…』
返信欄に文字を打ってみるも、途中で気が引けた。
会いたいのは事実。
俺はあいつの温かさも優しさも知ってるから、
会いたいと思うことに、何等不思議なことはない。
しかし今のこの俺の気持ちはそうじゃない。
樹に安心させてほしいから会いたいんじゃない。
樹の声を聞きたいから。
ただあいつの顔が見たいから。
あいつの鼓動音を聞きたいから。
樹に、
抱きしめてほしいから。
冷静に、改めて考えてみる。
「ねぇ、翔平って好きな人いないの?」
そう樹に聞かれた3年前の春。
「いるよ。」
「え?誰だよ。」
「川村壱馬さん。」
そう答えた俺に、
お前の表情が曇ったのはそう考えていいってことなの?
じゃあ、お前は今まで、
「壱馬さんも翔平にべったりじゃん。
だから、悩む必要ないんじゃない?」
「俺は2人を応援してるよ?」
「俺は壱馬さんじゃないんで。」
どんな気持ちで俺の隣にいたの?
そうだ。
あの日、
樹と喧嘩した日_(15話参照)_
俺が流した涙の意味は…
そっか
俺
樹が好きなんだ。
next…












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。