叶くんの手にはしっかりと口紅が握られ、彼の口には新作の口紅が塗られていた。
私は驚きの余り口をぱくぱくとしていると彼は口紅を元の店棚に戻し何事も無かったように帰って行った。
今のはなんだったんだ?
私は無事新作のメイクを買いデパートを後にした。
買い物中や帰路はもちろんあの場にいた叶くんの事ばかりを考えた。
何度考えても謎しか浮かばない。冷淡と呼ばれている彼が何故、口紅などを持っていたのか。
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次の朝。
余程の衝撃だった。頭の中はまだ叶くんのことを考えていた。
どうしよう。相談すべきか。
でも相談した所で朱里が答えを知ってるとも限らない。それに彼にとって昨日のことはバレたく無かったのではないか?
昼時、生徒の大半は食堂を使う。私達もその中の1人だ。
私はたまたま叶くんを見つけた。
叶くんも私に気付いた。お互いに目と目が合ったが、叶くんは直ぐに目を逸らした。
私にたまたま目があったわけでは無い。確実に叶くんは私に気付き故意に目を逸らしたのだ。
それはきっと。
昨日のことはやっぱり叶くんにとって見られては不味いものだったのだ。
その日の帰路も雨が降っていた。
そんな会話をし朱里とは別れた。
確かに今日も雨。傘を差して帰路につく。その途中昨日のデパートに入り、昨日のコスメの一角に来た。
するとそこには叶くんの姿があった。
私が言葉を探しているうちに叶くんは私の隣に来ると一言。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。