それらしきボタンを押してみると
テレビにスタート画面が現れた。
慣れない手つきでコントローラーを握り
なんとなくの勘で操作をしてみる。
だけど、いつも横で見ているのに
いざ自分がやってみると勝手が全然違う。
シューティングゲームっていうの?こういうの。
どうやら私の性に合わないらしく
何度やっても失敗するし、全然面白くない。
好きな人の好きなものなら
私だって好きになりたいけど…
「お前もやってみる?」と
何度となく誘われては、気乗りしなくて
「ううん、いい」と断って
いつも横で見ているだけ。
楽しそうにしている彼を見ているだけでも
十分楽しいから私はそれでいいけど
一緒にできたらもっと楽しいのかな、と
思い立ったものの…
ゲームしてると独り言すごい出るの
なんでなんだろ、と思いながら
コントローラーを握り直すと、
いつの間にかお風呂から出てきていたウォヌが
急に後ろから声をかけてきた。
そう言いながら近づいてくると
床に座った私の後ろから
ウォヌの両腕が回ってくる。
手足の長い彼に後ろからすっぽりと包まれると
まるで小さな子どもになったような
気分になる一方で、未だにドキドキしてしまって
もうゲームどころじゃない。
後ろから顔を覗き込むようにして
頬を寄せてくると、視界に入った彼の顔は
汗ばんでいて本当に暑そうだ。
メガネなんか曇っちゃってるし…
ウォヌの両腕にギュッと力が入る。
後ろから私を抱きしめたまま
楽しそうに左右にゆらゆら揺れながら
ウォヌは言った。
…なんだ。
無理することなかった。
そう言いながら私からコントローラーを
取り上げて、結局続きをするつもりみたい。
暑いのにずっとくっついてたりして
口には出さないけどちょっと甘えん坊で
子どもみたい。
そっと彼から離れて、やっぱり私の役目は
こっちかな、と思いながらキッチンに向かうと
ウォヌが珍しく焦った様子で
大声を出した。
~𝐄𝐍𝐃~












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。