第78話

77.
6,822
2021/01/19 16:25





帰りのバスの中


平日でもないのにバスの中は


それなりに人が多かった


2人で通路に立ちながら揺られる


免許証は持ってるけど驚くほど下手だ


そのせいで北斗からストップがかかった


乗らなくていい。と、


まあ、バスでも不便ではないからいいんだけど


そう思い何も考えずにまたバスに揺られる


そんな時だった


近くにたっている男の人が小さく舌打ちをした


驚いて顔をあげれば


私を睨みつけながら何やらブツブツと言っている


気味が悪い


そんな男の人に


樹も気づいたのか


そっと私の腕を後ろから引っ張った


その人が降りてく直前


何を言っていたかがやっと分かった



「暴力団の奴らがのうのうと生きんてんじゃねぇよ」



はっきりと聞こえたその言葉に


呆れて笑いそうになった


そんなことか。


それなら関係ない


だってそれはあっちの勘違いに過ぎないんだから


マフラーで隠していても


隙間から見えたんだろう


やっと自分たちの降りるバス停につき


バスを降りた



『なんか今日疲れたね』



そう言っていつもと同じように樹の方を見たのに


なんでそんなに悲しそうな顔をしてるんだろう



『樹?どーした?』



顔を覗き込みそう聞いても何も言わない


ん?急にどうしたんだろうか、


これといった心当たりがないまま



『帰ろっか』



と言って体の向きを変える


そんな私の腕を樹がガシッと掴んだ


振り返って見えた樹の顔は


今にも泣きそうで


どこか弱くて儚いものに見えた










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