帰りのバスの中
平日でもないのにバスの中は
それなりに人が多かった
2人で通路に立ちながら揺られる
免許証は持ってるけど驚くほど下手だ
そのせいで北斗からストップがかかった
乗らなくていい。と、
まあ、バスでも不便ではないからいいんだけど
そう思い何も考えずにまたバスに揺られる
そんな時だった
近くにたっている男の人が小さく舌打ちをした
驚いて顔をあげれば
私を睨みつけながら何やらブツブツと言っている
気味が悪い
そんな男の人に
樹も気づいたのか
そっと私の腕を後ろから引っ張った
その人が降りてく直前
何を言っていたかがやっと分かった
「暴力団の奴らがのうのうと生きんてんじゃねぇよ」
はっきりと聞こえたその言葉に
呆れて笑いそうになった
そんなことか。
それなら関係ない
だってそれはあっちの勘違いに過ぎないんだから
マフラーで隠していても
隙間から見えたんだろう
やっと自分たちの降りるバス停につき
バスを降りた
『なんか今日疲れたね』
そう言っていつもと同じように樹の方を見たのに
なんでそんなに悲しそうな顔をしてるんだろう
『樹?どーした?』
顔を覗き込みそう聞いても何も言わない
ん?急にどうしたんだろうか、
これといった心当たりがないまま
『帰ろっか』
と言って体の向きを変える
そんな私の腕を樹がガシッと掴んだ
振り返って見えた樹の顔は
今にも泣きそうで
どこか弱くて儚いものに見えた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。