時間とは無情にも進んでいく。
人がどれほど悲しみにくれ、もがき苦しんで居ても、時間は過ぎていくばかりだ。
そう、誰かが言っていたのを思い出した。
例の件から数日が経った。
私は中也と共に過ごすことは無かった。
家に帰らず、ただ無心に仕事へ打ち込んだ。
昼間は書類の作成や処理を夜は闇に紛れて殲滅やらの任務をこなしていた。
勿論、学業もちゃんと手をつけている。
学校こそ休んではいるものの、自分で教科書の内容は進めていた。
会社に泊まり込み、そんな生活を過ごしていた。
胸にポッカリと穴を開けたまま。
ビルの中を忙しなく動き回る。
休憩なんか入れない。ただひたすらに仕事をしていた。
任務の報告をすべく父さんの部屋へと来ていたが、にっこりと怖いほど綺麗な笑みを浮かべ、そんなことを問われる。
ぶっちゃけ言えば、覚えてない。
最後に何か食べたのはいつか、まともに寝たのはいつか、なんて覚えてかなかった。
食べないにしても水分はとっていた。
寝ないにしても合間合間で仮眠はしていた。
何かいけなかっただろうか?
最近体重が増えていたし、丁度いいだろう。
何か心配させるようなことしたかな?
私はそれだけ言って仕事に戻るべく部屋を出た。
昔から、分からないことがあった。
他人の心だ。
私が怪我をすると、みんな心配する。
私が食事を取らないと、みんな心配する。
皆は私が普通じゃないことを知っているはずなのに、いつも心配してくれていた。
何故だろうか?全く分からなかった。
勿論、皆がそうしていたら、私は心配する。
でもそれは、皆が人であって、人として生きているからだ。
考え事をしていたら、どっと疲れが襲って来た。
夜の帳が降りていく横浜を昇降機から見て、私は気分転換に外にでも行こうとそのままフロアへ降りた。
海が見える港で船の往来や波の動きを眺める。
潮風が心地よい。
波の音が、心を落ち着けてくれる。
何分経ったのか、はたまた何時間経ったのか、夜の帳はとっくに降りきっており、あたりは暗くなっていた。
それでも、港は船の灯りでギラギラと輝いているままだ。
ボーッと海を眺めているだけなのに、何だかフラフラとしてきた。
平衡感覚がバグったように足元が覚束無い。地面が動いているようだ。
ドサリと音がした。
体に衝撃が走った。
グラグラと揺れる視界がだんだん黒く塗りつぶされる。
黒に染る意識の中で、誰かが私を呼んだ気がした。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!