仕事を辞めてから、時間だけがやけにゆっくり
流れていた。応募しても返事が来ない。
面接に行っても、手応えはない。
そんな時に届いた一通のLINE。
送ってきたのは、昔からの友だち。
そして今は、なにわ男子のマネージャーをしてる人だった。
最初は冗談かと思った。
でも「裏方の雑務だけ」「期間限定」「正式スタッフじゃない」
と聞いて、少しだけ止まっていた時間が動く気がした。
初めて現場に入った日。
楽屋前の廊下は、想像以上に静かだった。
テレビで見るきらきらした世界とは違って、
空気は張りつめていて、みんな忙しそうで。
私は完全に場違いだった。
マネージャーに言われて、指示通りに動く。
“ここにいていい理由”を必死に探しながら。
その時 ───
前を見ていなかった私の肩に、誰かがぶつかった。
聞こえた声は、落ち着いていて、優しかった。
顔を上げた瞬間、息が止まる。
─── 道枝駿佑。
なにわ男子のセンター。
テレビの中の人。
まさか、こんな距離で見ることになるなんて
思ってなかった。
そう言って、少しだけ笑う。
近くで見ると、想像よりずっと静かで、柔らかい雰囲気だった。
それだけの会話。
なのに、何故か胸がざわついた。
それから数日。
私は裏方として、出来ることを渋々とこなしていた。
基本、メンバーとは関わらない。
それが暗黙のルール。
でも ───
声をかけてくるのは、いつも道枝くんだった。
周りに人がいる時は短く。
誰もいないタイミングを見計らうみたいに。
ある日、廊下で二人きりになった時。
呼び止められて振り返ると
道枝くんは少しだけ言いづらそうに視線を落とした。
正直に答えると、彼は小さく頷く。
その言葉が、胸にじんわり染みた。
そう言うと、彼は少し照れたように笑って距離を詰める。
そう言いながらも、離れようとはしない。
冗談みたいな言い方。
でも、その視線は真剣だった。
─── その瞬間、思った。
この人は、優しいだけじゃない。
仕事も、居場所も、まだ不安定な私に向けられる視線が、
少しだけ特別に見えてしまった。
まだ何も始まっていない。
でも確かに、ここから何かが変わりそうな予感がしていた。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。