暗闇。
まぶたの裏側に、まだ浴室の寒さが残っていた。
私は、少しずつ意識を取り戻した。
頭がズキズキと痛む。
手を動かそうとした瞬間……
ジャラッ。
金属の冷たさが手首に触れた。
目が一気に覚める。
手……足……動かない……?
恐怖に突き動かされるように視線を上げる。
自分の部屋ではないが見覚えのある場所、そう大晴くんの部屋だった
ただし……
ベッドの四隅に固定された手錠に、私の手足が繋がれていた。
落ち着いた声で笑う大晴くんが、椅子に座りこちらを見ていた。
声が震えて、言葉にならない。
大晴くんは、ゆっくり立ち上がり、何かを楽しむかのようにベッドへ近づいてきた。
その言葉は優しい調子なのに、温度がまったくなかった。
大晴くんの手が、私の頬に触れる。
優しいようで、逃げられない状況が恐ろしさを増幅させる。
彼の指が、喉元へゆっくり滑っていく。
やだ……
その先はだめ……!
弱々しい声しか出せなかった。
しかし大晴くんは、私の怯えた反応を見て、ふっと歪んだ笑みを浮かべた。
呼吸が苦しい。
涙が勝手に滲む。
怖い……
助けて……
誰か……!
その頃……
晶哉はソファから立ち上がり、リビングを見渡した。
いない。
どこにもいない。
不安が胸をよぎる。
その時、階段を降りてきた誠也が声をかけた。
2人は顔を見合わせる。
嫌な予感が、同時に背筋を走った。
そして……
キャァァァァァッ!!!!!!
家中に響き渡った甲高い悲鳴。
明らかに、如月の声。
誠也と晶哉は同時に駆け出した。
二階へ。
その“影”が潜む場所へ。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!