まだ暖かな春先に起こった、獅子頭連とボウフウリンのチームを掛けたタイマンは和解で成立した。
タイマンが行われる前に梅宮からメールが届いた楓は、その内容に不安と心配が募り「会いに来るな」という言葉を守っていた。
きっと梅宮に会いに行けば獅子頭連の仲間に目を付けられ巻き込まれる可能性を避ける為だと分かっているが、やはりどうしても声は聞きたくなるもので授業を抜け出して携帯の通話ボタンを押した。
人気のない屋上のフェンス伝いにしゃがみ込むと楓は深い溜息を吐き出した、切れた通話の表示に心を覆い尽くそうとしている不安や心配を払うように頭を振ると頬を叩き教室へと戻るのだった。
赤色の夕日が窓から差し込む時間帯、ことはからのお願いで喫茶店の手伝いをしていた楓は杖をついたお婆さんが扉を開けようとしていたのを手伝い送り出して店内に戻ろうとすると少し遠くから歩いてくる緑色の制服に息が止まりかけた。
いつもの太陽のような笑顔で手を振りながらのんびり歩いてくる梅宮を見た瞬間、堰き止めていた何かが崩れその場から走り出すと自分より大きな身体に飛びつく。
突然の楓からの暴言に戸惑いながら周りを見ると呆れたような表情を浮かべ胃痛薬を口に放り込んでいる柊が、喫茶店の扉を開けて言葉を放った。
喫茶店の中からフライパンを持って楓の様子を見て怒り狂ってることは、未だに梅宮の胸をポコポコと叩きながら泣いている楓にどうすれば場が収まるか考えるが思い付かなかった。
静かな空気が漂っている喫茶店ポトス、今は言うとことはは買い物に行き先程まで一緒にご飯を食べていた柊達は帰ってしまった。残された梅宮と楓はテーブル席の隣同士に座り怪我した所を手当して貰って、少し目元が赤くなって視線を合わせない楓と泣かせて申し訳ないと言う気持ちで縮こまっている梅宮が居た。
腕に出来た打撲痕を見詰めながら顔を強ばらせ涙を堪えている楓の表情が痛々しくて梅宮は細い背中に腕を回すと腕の中に閉じ込め抱き締めた。顔を埋めることになったTシャツは汗と血の匂いが混じっていて梅宮がこんなにも体を張っていた事を感じ取ると、逃げ出したくて突っ張っていた腕を下ろしてしまう。
抱き締めていた腕を緩めると涙で潤んだ瞳が嬉しそうに緩め花のような笑みを浮かべられた、その表情に愛おしさが募った梅宮は胸を高鳴らせながら耳元に囁いた。
キッチンに隣同士で立ち食器の片付けを始めている梅宮の事を見上げると、優しげな眼差しで見下ろしてくる彼に慌ててお皿に視線を戻すと楓はドキドキと高鳴る胸を感じるのだった。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。