第40話

ㅤ佰肆拾肆ㅤ母ノコトㅤ
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2025/11/15 08:11 更新





視点︎ㅤ:ㅤ霜吹あなた




無惨 「 お前は ... 紅雀の娘か 」

『 ! 』




目の前の鬼の言葉に、全身が硬直する。

そういえば鬼となった母は 「 あのお方に認められた 」 とか何とか言っていたな、と思い出す。

そうか。やっぱり鬼舞辻無惨のことだったのか。




無惨 「 あの女は滑稽だった 」




思わず、『 は? 』と声が漏れた。

この鬼は何を言っているのかと、この鬼のどこにそんなことを言う権利があるのかと、知りたかった。




無惨 「 上弦の鬼ですらないというのに、自分は強いと、私のお気に入りであると錯覚していた 」

無惨 「 頭の弱い可哀想な奴だった ... 柱でもない娘一人も殺せずに惨めな女だ 」




急速に熱が冷めていく。

身も心も人であることを放棄した目の前の生き物に吐き気がした。

脳は、至って冷静だった。




『 黙れ 』

無惨 「 何だと? 」




記憶の中の母は、いつも笑っていた。

父に殴られ、心も身体もズタズタにされて辛くても、

それをグッと堪えて無理やりにでも私に笑顔を向けた。

母の心は、いつもいつも泣いていた。

そんな母を見るのが苦しかった。




『 母は立派な人だった。私に涙を見せまいと、笑顔を絶やさない人だった 』




もし、あの人がこの鬼の血を被らなかったらどうなっていたのかと、考えたことがある。

もしかしたら、母とは和解して ... もしかしたら、伊黒さんや甘露寺さんとも仲良くなって ...

もしかしたら、無一郎の事を紹介する未来が、あったのかもしれない。

そんな一縷の希望も、この鬼によってついえた。

許せない ... 絶対に許さない。

母の気持ちも、流した涙も、泣きたくなるような温もりも知らない鬼ごときが。




『 あの人は〝 紅雀 〟なんて醜い名前じゃない。お前の汚い言葉で、私のお母さんを愚弄するな 』




今まで散々恐れてきた母が、いざ侮辱されると無惨に対する怒りが湧いてくる。

私も大概頭のおかしい人間だ。




───── 氷の呼吸 肆ノ型 斬雪




鬼舞辻 「 技を出した割にはなんとまぁ滑稽な姿だ。私を斬ろうなど ──── 」




ソコを狙って刀を振るった。

どういうわけか私の刀は意図も簡単に、





鬼舞辻 「 ( 斬られた ... !?いつの間に ... !! ) 」




鬼の口元に大きな傷を作ってみせた。




『 そのいらない口、私が粉々に斬り刻んであげる 』

伊黒 「 あなた ... !! 」




伊黒さんの驚いた顔が視界に写った。

その表情には、驚愕と懐疑 ... そして僅かな希望の色が滲んでいた。




甘露寺 「 あなたちゃん!! 」




そして、私に向かってくる管のような攻撃は、









悲鳴嶼 「 遅れてすまない 」




大きく頼もしいその背中が防いでくれた。

さらに、無惨の背後から忍び寄った不死川さんがその体に刃を振るう。

不死川さんが投げた何か ──── アルコールだろうか ──── を全身に浴びた無惨は、彼が放ったマッチの火によって火だるまになった。




シィィイイ ...




呼吸を整え、無惨の体に目を凝らす。

動ける柱はみんな揃った。相手にとって不足はない。




───── 今夜、この長い悪夢を終わらせる。




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