前の話
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あの子がいなくなったとき、なんだかおかしくて、でもだれもさわがなかった。
せんせいは朝のあいさつでひとつ名前をとばした。
って聞いたら
って、せんせいは言った。
まわりのみんなはそんな子居ないって言う。
でも、あの子はちゃんといた。
りうらの隣の席で、おやつののゼリーがいやだっていつもさいごまで残してた。
みんなきっとわすれちゃったんだ、それならりうらが探さなきゃって。
沢山さがしたけど、いっしょに遊んだ公園にもふたりのひみつきちにもいなかった。
つぎの日の朝、かばんをしまおうとしたら、りうらのろっかーのおくにてがみがあった。
はじっこがふやけてて、ところどころ水ににじんだあかいいろがくらげみたいに広がってる。
たすけて
ここはくらい
さむい
だれもこない
そんなふうに、ところどころ読める。
でも、なまえは書いてない。
あの子の字に、ちょっと似てたけど、りうらはだれにも言えなかった。
つぎの日、きょうはせんせいに言おうとおもってて。
でもおへやに入ったら、あの子のぜんぶがさいしょからなかったみたいになって、ろっかーのばんごうもけされてた。
ばんごうだってひとつずれてた。
みんなはなにも気にしてない。
その夜、りうらはもう一度てがみをよんだ。
おへんじも書いた。
「だいじょうぶ。りうらがきづいてるよ」って。
それを、ビニール袋に入れて、おふろのおゆにしずめた。
くらげが、ちゃんととどけてくれますように。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!