カンッカンッ ガツッ
朝日が差す訓練場の中で、木刀が激しくぶつかり合い音を立てる。
一旦距離をあけて、目の前で構える体格の良い男に刀を向けたまま対峙した。
身長の割に小さい顔と、長い手足。彼の体の左側は、陽の光に照らされて輝いている。相手の一切の注意がこちらに向けられているのが分かった。
長い睨み合いに痺れを切らし、鋭い三白眼を見据えて、思い切って踏み込んだ。
が、胴を狙って振り下ろした刀は阻まれ、向きを変えて再度下ろしても払われる。激しい打ち合いの後、私が最初攻めていたはずがいつの間にか守りに入っていることに気づくと、脇腹を木刀で打たれた。
その瞬間、辺りを満たしていた緊張感は緩み、彼が笑顔を浮かべる。
悔しくて、集中力が切れた私はそのまま床に寝転んだ。
笑いながら私の顔を覗き込んできたナムジュンを軽く睨む。武芸もできるくせに頭も切れるのだ、この人は。
代々王族の護衛を任されるキム親衛家。彼はその由緒正しき家の嫡男だ。
護衛にあたってまず重要なのが武芸に秀でていること。ナムジュンは武芸向きの高い身長と長い手足を持ち、体力も優れている。彼の能力を見込んだ武芸の師が次々と教えたので、一通りの武具は高い水準で使いこなすことができる。
さらに鍛錬を惜しまない性格を発揮し学問においても優秀で、頭の回転が早い。
ナムジュンは頭を使って鍛錬や戦いに臨むので、やはり彼は強く、これ以上無いくらいの理想的なキム家の跡継ぎだった。
差し出された手をとって起き上がる。
軽く服を払って、木刀を片付け、愛刀を手にして訓練場を出た。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。