酸化していくこの世界で、僕は今日も生きのびてしまう。
僕の名前は太宰治。ポートマフィアに所属してる。因みに16歳。
僕は右目に包帯を巻いている。
そう。この顔の包帯は、あっても無くても変わらない。
だって、僕の右目が映すのは、灰色で、光のない、モノクロ映画みたいな世界なんだもの。物の輪郭もわからないくらいぼやけてて、灰色か、黒色のドット柄見たいな景色しか、映さないの。先代首領に川から拾われる前から、ずっと。だから、変わらない。この右目をおおう包帯があっても、なくても、結局右目は世界の何も映さない。でも、視界の半分が灰色であまりにもぼやけていたら、過ごしにくいから。眩しい色と、光のない世界で半々に見てると、目がチカチカする。だから包帯を巻いている。
このことを知っている人は、誰1人としていない。森さんでさえも、知らない。
〜六年後〜
目がチカチカする。頭が痛い。この歳になっても、私の右目は相変わらず虚空を映すだけ。だけど、今は包帯を巻いていないから、右目と左目の彩度の差で、唐突に目が眩む事が多々ある。でも真逆、このタイミングでそれが起こるとは。
私は右目を手でおおい、うずくまってしまう。
中也はすぐに私の異常を察して駆け寄ってきた。そして私の背中に手をおき、私の顔を覗き込んでいる。両目をギュッとつむり、右目を手でおおっている私を見て、中也は『ちっと失礼するぞ』と言った後、私を抱き上げ、(お姫様抱っこ)近くの公園のベンチに座らせてくれた。その後、中也は『飲み物買ってくる。ここにいとけよ。』とどこかへ消えた。
今日は天気が非常に良い。太陽がキラキラと輝いて眩しい。このベンチは木陰になっているが、さっきの道端は日が直接当たっていた。おそらく、屋外で、しかも日の当たる場所だったために、余計に目が眩んだのだろう。
頭が割れるように痛い。左目に映る視界が白黒に点滅する。右目が血が吹き出そうなくらいにジワジワと痛い。
今は視界が頼りにならないので、聴覚で状況を把握するしかない。きっと、中也が戻ってきた。
そう言って、中也は私の右目に何かしていた。何か、巻いている?
それから数分後、頭痛と目の眩みが落ち着いた。そして、安心感からか、気づかなかったのか、いつの間にか流れていた涙も少しおさまり、鼻をすすっていた。それを誤魔化すかのように、中也がさっき買ってきてくれた苺ミルクを飲んでいた。
私の右目には、ポートマフィア時代の時のように包帯が巻かれてあった。
そう言って、私の隣に座っていた中也は立ち上がり、公園から出て行こうと歩き始めた。だが、中也の足は、一歩踏み出したところで止まった。私が、独り言のように話し始めたからだ。
私は俯きながら、小さな声で、話し続けた。右目だけ、視力が異常に低い事、右目だけ、色を映さない事、今は包帯をしていないから、こういう風に頭痛と目が眩むことが多々ある事、今回は日の当たる屋外であったせいで、いつもよりひどかった事。包み隠さず全て話した。途中から、中也は私の隣に又座り、俯きながら話す私の背中をさすってくれた。
私が話し終わった後、中也は短くそう言った。
中也は立ち上がり、公園の出入口に吸い込まれるようにして歩いて行った。その道中、中也はポツリ呟いたのが、地獄耳の太宰はしっかりと聞き取った。
それから、私はそのまま探偵社に向かった。突然、右目に包帯を巻き、苺ミルク片手に出社したために、探偵社のみんなは驚いていたが、中也に言われた通り、「ものもらいが出来た」と言えば納得してくれた。ただ一人、眼鏡をかけた乱歩さんが、突然『成程。良かったね太宰。』と言ったことで、探偵社が少し混乱した。
それから一週間程、右目に包帯をつけたまま過ごし、私はその包帯をつけている間に、サングラスを買った。四角いフレームで、目を完全におおい、真っ黒なレンズ。そのサングラスをかければ、他人から見れば目は完全に見えなくなる。包帯を外した後は、私は外にいる間、そのサングラスをかけた。探偵社のみんなには、イメチェンだと言って。そこまでしたのは、今考えてみれば屋外の方が目が眩むことが多かったから。だが、中也と会ったあの日以外は、必ず日陰で起こっていたし、数秒間、目がチカチカするだけだった。なぜあの日、日向であそこまでなったのかはわからないが、日向でああなってしまう可能性が、少なからずあるのだとわかった。あの時、一緒にいる相手が中也で良かった。もし、社のみんなだったのなら。もし、敵の目の前だったのなら。社のみんなは根掘り葉掘り聞いてきて、探偵社内で共有して、気を遣わせる。それだけじゃない。これは私の弱点になり得ること。だから、知る人が多ければ多いほど敵にバレやすくなる。もし敵の目の前であれを晒した時もそうだ。こっちは直で隙を突かれるし弱点を知られてしまう。その点、中也なら安心だ。ああ見えて中也は、中也が忠誠を誓っている首領にも隠し事が多い。私が誰にも知られたくないのを察した時は、首領に命令されても何も言わなかった。例えば、私の他の弱点を知った時や、体調を崩している時。首領に報告せず、誤魔化してくれていた。中也は口が硬い。そして、知ったからには十分すぎるサポートをしてくれる。
〜数日後〜
そう言って、中也は自身がかぶっていた帽子を、私に被せ、手を繋いできた。中也は日向側を歩き、私には日陰側を歩かせてくれた。中也も日陰に入れたかったけれど、日陰は狭くて、人一人分しか幅がなかった。仕様がないのでそのまま歩いていく。
それってつまり、首領に嘘の報告をしたってことじゃ、、、
酸化していくこの世界で、私は今日も生き延びてしまう。でも、君がいてくれるのなら、それも悪くはないかな。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!