第69話

↛本当は
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2025/05/08 08:25 更新




ガチャッとドアを開けてお母さんの靴が
玄関にあるのを確認する.

実は、今日はお母さんが帰る日、
星見イベントのことと雲雀のことであまりお母さんと
話さなくなっていたから、少し心配だけど.

ふぅーっと息を軽く吐いて呼吸を
整えてリビングに入る.



あなた
…ただいまー、
.
…おかえり、遅かったけどどこ行ってたの?

怖い、お母さんの目が笑っていない黒い目で
そんな気持ちが湧いてくる.

大丈夫、大丈夫。心を落ち着けて口を開く.

あなた
ちょっと星空見てたら意外と時間経っちゃってて、
.
そう、ならよかった。次は気をつけてね


そういうお母さんの瞳はまだ元に戻っていなくて
でも絶対今日こそは言うんだって気持ちで
拳を握りしめる.明那くんが頼ってって言ってくれた
こと、四葉が優しく笑いかけてくれたこと、
―――雲雀が好きって言ってくれたこと。

全部を思い出して勇気を出して口をまた動かす.

あなた
ねぇお母さん、
.
どうしたの、あなた。
今日は沢山話してくれるのね、もしかして
お母さんがあっちに帰る日だから、?


うんって素直に頷くとお母さんが少しびっくりした
顔をして、直ぐにハッと気を取り直した様な顔になり
口をもう一度開きかける.

が、お母さんが喋る前に口を動かす.

あなた
…私さ、もうお母さんの言う通りにするのやめる
.
…え、


見開かれたお母さんの瞳に追い打ちを
掛けるよう更に言葉を吐き出す.

今まで思ってたことを言わなきゃ、この機会を
逃したらもう、一生辛いままで生きていかなきゃ
生けなくなるかもしれない、…そんなのはイヤだ。
たったそれだけの気持ちで口を動かす.

あなた
友達を決められるの、イヤなの
私だって好きな子達と話したい、
あなた
お母さんがあっちに仕事で行ったときは
色々出来なかったことができて、
あなた
…楽しかった、やりたかったことができたの、!!
あなた
友達と遊びに行ったり、笑い合ったり、
お祭りにだって行けた、!


一度喋ったら言葉が止まらなくてドバドバと
言葉が溢れてくる.お母さんが戸惑ったような顔で
こちらを見つめ返す.

.
あなたの名前の頭文字 例)雲雀→ひ、あなた
あなた
…もうっ、!縛られたくないのっ…!


喉が張り裂けそうなくらいいつもの私より
大きな声を出してお母さんの掴もうとした手を振り払う.


と、お母さんが動かなくなって、思わず首を傾げて
顔をそろそろと覗き込む.

あなた
……お母さん、?
.
…ごめん、そうだよね
あなた
っえ、


名前を呼ぶと、お母さんの口からいつもより弱弱しい声
が漏れてびっくりすると、ぽたりぽたりと
涙のしずくが床に落ちる.

あなた
ええぇ…?


思ってた反応と違って思わずそんな声を出してしまう.

あれ〜…お母さんなら怒って反対しそうだなって
思って言わなかったのに……

.
お母さんわかってたのよ、あなたがこんなの
望んで無いって小さい時から、
あなた
じゃっ、なんでこんなっ、
.
…お父さん、死んじゃったでしょ


お母さんの先の見えない言葉に
不審な顔をしつつも、こくりと頷く.

お父さんは私が生まれて間もない時に私の魂と交換
されるかのように刃物で刺されて死んじゃったらしい.

.
…その、刺した人、お父さんの
親友だった人なんだ
あなた
っえ

お母さんから放たれた言葉に大きく目を見開く.

私の顔を見るとお母さんが自分の目の涙を
人差し指で拭ってくすりと小さく笑う.

.
お父さんの事がずっと妬ましかったんだって、
.
なんでも出来てなんでもないみたいに全部こなすから。…努力のお陰なのにね


切ない表情でお父さんを思い出すように
天井を見つめるお母さんに息を呑む.

いつもの優しいお母さんでも、怖いお母さんでも無くて
お母さんもちゃんとした一人の人間なんだって当たり前
の事を理解させられた気がしたから.

.
だから、あなたもそうならないようにって
親としてあり得ない勝手な事をしてた、
本当にごめんなさい
あなた
…ううん、私こそ早く嫌なことは嫌っていえばよかった。
あなた
お母さんとちゃんと話をすればよかった、
私こそごめんなさい


一緒に謝りあって近くに寄り添って互いに抱きしめあった.

大きくなったら恥ずかしくなっていて、いつからか
しなくなっていたこととか、過ちとか沢山あるけど、
それは何時の日か、存在ごと忘れてしまうのかなって
少し怖くなってしまうと同時に自分の成長を感じられた
ような気がしたから.
あなた
…お母さんと私結構似たもの同士かもね
お母さん
…ふふ、確かにね、


久しぶりに何も考えずにお母さんと笑い会えた
この瞬間はどうしても忘れたくないな、って窓から
見えた小さなお星様を見ながら、そう思った.

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