ガチャッとドアを開けてお母さんの靴が
玄関にあるのを確認する.
実は、今日はお母さんが帰る日、
星見イベントのことと雲雀のことであまりお母さんと
話さなくなっていたから、少し心配だけど.
ふぅーっと息を軽く吐いて呼吸を
整えてリビングに入る.
怖い、お母さんの目が笑っていない黒い目で
そんな気持ちが湧いてくる.
大丈夫、大丈夫。心を落ち着けて口を開く.
そういうお母さんの瞳はまだ元に戻っていなくて
でも絶対今日こそは言うんだって気持ちで
拳を握りしめる.明那くんが頼ってって言ってくれた
こと、四葉が優しく笑いかけてくれたこと、
―――雲雀が好きって言ってくれたこと。
全部を思い出して勇気を出して口をまた動かす.
うんって素直に頷くとお母さんが少しびっくりした
顔をして、直ぐにハッと気を取り直した様な顔になり
口をもう一度開きかける.
が、お母さんが喋る前に口を動かす.
見開かれたお母さんの瞳に追い打ちを
掛けるよう更に言葉を吐き出す.
今まで思ってたことを言わなきゃ、この機会を
逃したらもう、一生辛いままで生きていかなきゃ
生けなくなるかもしれない、…そんなのはイヤだ。
たったそれだけの気持ちで口を動かす.
一度喋ったら言葉が止まらなくてドバドバと
言葉が溢れてくる.お母さんが戸惑ったような顔で
こちらを見つめ返す.
喉が張り裂けそうなくらいいつもの私より
大きな声を出してお母さんの掴もうとした手を振り払う.
と、お母さんが動かなくなって、思わず首を傾げて
顔をそろそろと覗き込む.
名前を呼ぶと、お母さんの口からいつもより弱弱しい声
が漏れてびっくりすると、ぽたりぽたりと
涙のしずくが床に落ちる.
思ってた反応と違って思わずそんな声を出してしまう.
あれ〜…お母さんなら怒って反対しそうだなって
思って言わなかったのに……
お母さんの先の見えない言葉に
不審な顔をしつつも、こくりと頷く.
お父さんは私が生まれて間もない時に私の魂と交換
されるかのように刃物で刺されて死んじゃったらしい.
お母さんから放たれた言葉に大きく目を見開く.
私の顔を見るとお母さんが自分の目の涙を
人差し指で拭ってくすりと小さく笑う.
切ない表情でお父さんを思い出すように
天井を見つめるお母さんに息を呑む.
いつもの優しいお母さんでも、怖いお母さんでも無くて
お母さんもちゃんとした一人の人間なんだって当たり前
の事を理解させられた気がしたから.
一緒に謝りあって近くに寄り添って互いに抱きしめあった.
大きくなったら恥ずかしくなっていて、いつからか
しなくなっていたこととか、過ちとか沢山あるけど、
それは何時の日か、存在ごと忘れてしまうのかなって
少し怖くなってしまうと同時に自分の成長を感じられた
ような気がしたから.
久しぶりに何も考えずにお母さんと笑い会えた
この瞬間はどうしても忘れたくないな、って窓から
見えた小さなお星様を見ながら、そう思った.













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!