第122話

何も知らない
199
2026/02/28 11:32 更新
 スマホを開くのが、
 怖い。

 でも開かないと、
 もっと怖い。

 叶へのコメントを見れば

 “同棲?”

 “匂わせ?”

 “プロ意識”

 なんて。

 画面に映る写真。

 夜の窓。
 カーテン越しの影。
 玄関前。

 鍵を開ける背中。

 これは、私だ。

 でも顔は映ってない。

 なのに。

 “彼女確定”

 “一般人なのに図々しい”

 勝手に物語が作られていく。

 息が浅くなる。




 ——なんで。

 なんで、ここまで?

 叶は何も言わない。

 説明も。

 通話履歴を開く。

 叶。

 指が止まる。

 かけたら、
 何か変わる?

 それともまた、

 「大丈夫」

 って言われる?

 ……嫌だ。

 でも
 勢いで
 通話ボタンを押す。

 数秒たった後。
kne
 ……もしもし 
 声が聞こえた瞬間、
 溜まってたものが溢れた。
 私、何も聞いてない 
 なんでこうなってるのかも、 
 誰が撮ったのかも、
 どうするのかも
 全部、知らない 
 声が震える。

 怒ってる。

 でもそれ以上に、

 怖い。
 守るって言うけど 
 守られてる側
 何も分かんないの
 めちゃくちゃ怖いよ 
 通話の向こうで、
 叶が息を呑む気配がした。
kne
 ……ごめん 
 また、それ。 
 それじゃ分かんないよ 
 涙が出る。

 悔しい。
 私、子どもじゃない 
 決めるの、
 一人でやらないで 
kne
 ……今は 
kne
 今は、言えない 
 その一言で、
 何かが切れた。
 またそれ?w 
 笑ってしまう。

 乾いた声で。
 私、信用されてないの? 
 違うって分かってる。

 でも、
 分からないから怖い。
kne
 ……違う 
 弱い声。 
 じゃあ何? 
 答えは来ない。

 沈黙だけ。

 私は、
 ゆっくり息を吸う。
 ……一回、
 距離置こ 
 自分でも驚くくらい、
 冷静な声だった。
 今、私 
 叶に何も知らされず 
 ただ守られてる
 だけでいるの、 
 しんどい 
 通話の向こうが、
 完全に静まる。
 全部終わったら、 
 ちゃんと話して
 それまで、
 私は私で考える 
 切る前に、
 小さく付け足す。
 好きとか嫌いとかの 
 話じゃないから
 通話を切る。

 部屋が静かになる。

 スマホを置いて、
 顔を覆う。

 守られてる。

 でも。

 選ばせてもらえない守りは、


 孤独だ。

 私は、
 一緒に背負いたかった
 だけなのに。

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