穏やかな朝日がカーテンから溢れ出て、私の目元を照らす。
眩しくて、少しずつ目を開ける。
起きて、着替えて、部屋を出る。
静かなこの家に私の足音が響く。
そのまま、食堂につく。
ついて、しまった……。
ガチャリ
既ににぃが座っていた。
隣には、もちろんイエモンさんが。
少し困ったような笑みを浮かべる、イエモンさん。
そして……。
…………ねぇ、なんで、にぃ…。
何時から、そんな素っ気なくなっちゃったっけ、?
何時から、目を合わせてくれなくなったんだっけ、?
食事が終わって。
執事でもあるイエモンさんが食器を下げる。
………つまり、にぃと二人きり。
返事がない
見向きもしない
無視されて、凄く……凄く悲しい。
あの優しい面影は、とうの昔に消え去った。
悲しい。悲しい。悲しい。
嫌だよ、なんで無視するの?
やだよ……
そんなにぃ、見たくないよッッ !!
大きな声で、肩を叩いて、声をかける。
すると……やっと、やっと。
何年も合わなかった目が合う。
………だけど。
___違う。
あの、温かな、優しい光があったはずなのに。
なんで…そんな……
絶対零度の…冷たい、鋭い色で私を見るの…?
だ、だけど…見てくれた。
このチャンスを活かさないと…!
何か、何かと話さなきゃ。
話さ……ないと………
話したいこと、一杯あるのに。
前に貰ったうさちゃんのぬいぐるみ、まだ一緒に寝てるよとか。
勉強沢山頑張ってるんだよとか。
庭に綺麗な花が咲いてるよとか。
今日は良い天気だねとか。
………大好きだよ、とか……。
言いたいことが、幾つも、星の数程あると言うのに。
どれも言葉にならなくて。
喉の奥で突っかえてしまって。
なにも、言えなくて。
くるり、と身体を翻すにぃ。
あ駄目だ、行っちゃう…!
強く、とにかく呼び止めたいはずなのに。
零れ出たのは、弱々しい声。
独裁者。
その単語が頭に浮かんだ。
目の前にいるのは、他が霞むほどの…圧倒的な、独裁者が。
___ああ、もう……無理なんだね
その言葉だけは……聞きたく、なかったなぁ…… w
ぱたん、と自室の扉を閉める。
思わずベッドに倒れ込みそうになるのをなんとか止める。
………あれは、危険だ。
あんな風に冷たいのは見覚えがある。
私の…私達の、実の親。
彼等は庶民…平民達が苦しくなっても自分達が楽しければ良い、みたいな感じで治めていた。
だからこそにぃが直ぐ代替わりできたんだけど……。
今、にぃは……両親と同じ。
あのままじゃ…平民の皆が苦しい思いをしちゃう。
それから、ずっとずっと、考えた。
お昼ご飯と、夜ご飯でも結果は同じ。
もう、やっぱり……無理なんだなって……。
苦しい。
これを見越してはいた。
だから準備もしていた。
だけど……やりたくなんて……
……だけど、やらないと。
私が……やらないと。
皆を守るために……
覚悟を決めろ、柊鳴緋夏…。
いや、
ヒナ
クローゼットを開ける。
中に入れていた大きめのリュックの中身を確認する。
………うん、大丈夫だ。
服も、今みたいな上位の人間しか着れないような服じゃなくて。
普通の服を着る。
ノースリーブに黄色の…リボンなのかな、こういう服は分からない。
最後に大きめの黒が基調のパーカー緩く着る。
それで、用意していた置き手紙をうさちゃんの横に置く。
……なんとなく、うさちゃんを撫でる。
私がもし……戻ってこないということは。
私は………もう……
がらり、と窓を開ける。
冷たい夜風でカーテンが暴れる。
………落ち着け、ヒナ。
私は窓から飛び降りた。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!