第10話

一年後の君へ、僕はまだ恋をする
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2026/02/10 06:23 更新
私は知ってる。ここに来れば、彼は逃げない。
図書室は静かで、余計な言葉が要らない場所だから。
本は、正直どうでもいい。
内容も、作者も、あまり覚えていない。
でも彼は、本の話をするときだけ、少しだけ声が変わる。
それを聞くのが、好きだった。
同じ話をしていることに、気づかない日もある。
気づいても、気づかないふりをする日もある。
春が近づくと、頭の奥がざらつく。
――せめて、今年の春だけは。

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