前の話
一覧へ
次の話

第19話

2-7 思い返し
3
2026/02/22 00:00 更新
…あれって
間違いない。
あそこまでノイズを厚く纏ったバグなんて、【輪廻】に決まっている。
八夢
……やっぱりかぁ……
八夢はスマホを握りしめてそう呟いた。
八夢のスマホには写真が写っている。
写真には、それがあった場所に、夜空のような髪色の青年が写っている。
八夢
………
八夢さん…?
彼女の瞳は、名残惜しそうように揺れている。
司は人の扱いに自信はない。
だから今もどうするか迷ったのだ。
だが、司と八夢は“仕事”仲間なのだ。
八夢さん!
八夢
あ…
あの、報告を…その、写真撮ったんですよね
八夢
!そうだね…分かった。私が送ります
八夢は指でスマホを叩き始める。
それが止まると、彼女はおもむろに立ち上がった。
八夢
司さん。今行って間に合うか分からないけど追いかけましょう
…はい
八夢の瞳には獲物を狙うような、そんな鋭さがあった。
喧騒と雑踏の中を、2人は早歩きで通り抜けていった。
八夢
…あのね、司さん
はい?
静かだけれど不思議と耳に残る声だった。
八夢
あの人…私の先輩なんですよ

声と空気が揺れた。

その言葉で、先程感じた不思議さが何か分かった気がした。
八夢
確かに闘技場で見かけたけど…何なら話したけど!
八夢
なんで信じちゃったんだろーって…
一度ついた勢いが、また下がっていく。
八夢
馬鹿みたいですよね!私
八夢は力なく笑う。
いや、そんなんじゃないと思います
八夢
いいんですよ、分かってますから
自分の思ったことを置き去りにした返答は、八夢にはお見通しだったらしい。
言うことなんて思いつかなかった。




























舛花街の直線的で広い道を、どれだけ行っただろうか。
少し先には、もう灰色のノイズが見える。
司は目を凝らして、それの周囲を見た。
…え
見覚えのある長髪とツートンカラー。
スマホのレンズを通せば、知り合いの微笑ましい光景が目に入ってくる。
…八夢さん
八夢
なに?
この仕事から逃げることってできます?
八夢
できないと思う
足を止めると、冷たい追い風が強く吹いていることに気づく。
…じゃあ親しい人と対立することが確定した時の気持ちって何だと思います?
八夢
奇遇ですね。私も同じ状況ですよ
……仲間ですね
八夢
…そうだね
司はため息をひとつ吐く。
本当に、舛花街の空に星は無かった。
紺一色の夜空が、少し歪んで見えるのはおかしいのだろうか。

司の茶色の瞳が光を帯びる。
八夢さん、あれの名前って
八夢
はい?




















境で合ってます?


八夢は頷く。

それを皮切りに、司の瞳はもっと強く光り始めた。



























紺青の中に、小さな淡い色素を見る。














【輪廻】
(あ〜あ、バレちゃった)
そう微笑む度に、彼は鮮やかな青をひた隠している。

プリ小説オーディオドラマ