間違いない。
あそこまでノイズを厚く纏ったバグなんて、【輪廻】に決まっている。
八夢はスマホを握りしめてそう呟いた。
八夢のスマホには写真が写っている。
写真には、それがあった場所に、夜空のような髪色の青年が写っている。
彼女の瞳は、名残惜しそうように揺れている。
司は人の扱いに自信はない。
だから今もどうするか迷ったのだ。
だが、司と八夢は“仕事”仲間なのだ。
八夢は指でスマホを叩き始める。
それが止まると、彼女はおもむろに立ち上がった。
八夢の瞳には獲物を狙うような、そんな鋭さがあった。
喧騒と雑踏の中を、2人は早歩きで通り抜けていった。
静かだけれど不思議と耳に残る声だった。
声と空気が揺れた。
その言葉で、先程感じた不思議さが何か分かった気がした。
一度ついた勢いが、また下がっていく。
八夢は力なく笑う。
自分の思ったことを置き去りにした返答は、八夢にはお見通しだったらしい。
言うことなんて思いつかなかった。
舛花街の直線的で広い道を、どれだけ行っただろうか。
少し先には、もう灰色のノイズが見える。
司は目を凝らして、それの周囲を見た。
見覚えのある長髪とツートンカラー。
スマホのレンズを通せば、知り合いの微笑ましい光景が目に入ってくる。
足を止めると、冷たい追い風が強く吹いていることに気づく。
司はため息をひとつ吐く。
本当に、舛花街の空に星は無かった。
紺一色の夜空が、少し歪んで見えるのはおかしいのだろうか。
司の茶色の瞳が光を帯びる。
八夢は頷く。
それを皮切りに、司の瞳はもっと強く光り始めた。
紺青の中に、小さな淡い色素を見る。
そう微笑む度に、彼は鮮やかな青をひた隠している。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!